浦野が故障から復帰初戦で自己新

3月の3000mを最後に試合から遠ざかっていた浦野雄平が、5000mで13分29秒37(2位)と自己新記録で復活を遂げた。2月の大阪マラソンで2時間07分52秒で3位となり、来年10月開催のMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ。パリ五輪最重要選考会)出場資格を得ていたが、動向がわからず長距離ファンの気を持たせていた。

「4月に股関節周辺に痛みが出て、半年間まともに走れませんでした。(週に2~3回行う負荷の大きい)ポイント練習を始めたのは(11月3日の)東日本実業団駅伝が終わってから。約1カ月でここまで来ました」

治療は股関節だけでなく「重心の乗せ方、臀筋の使い方、呼吸法と見直して、今もそうですが、リハビリトレーニングを継続してきた」と言う。呼吸は腹式呼吸、胸式呼吸をしっかり行うことで、背中の張りなどが違ってくる。
復帰戦で5000mの自己新が出せたということは、新たな走り方がスピードに結びついた可能性が高い。リハビリトレーニングの過程で、持久力が培われていたということもありそうだ。

マラソン次戦は今年と同じ大阪を、来年2月に走るつもりでいる。
「前回は3位だったので、次は優勝をしっかり狙います。タイムは気にしていません。MGCを勝ちきることが目標なので、大阪を勝つことで成功体験にしたいんです。タイムより勝負です」

復帰レースでの快走で、“マラソンの浦野”への期待が高まった。

キャプテンとしてV奪回に挑む坂東と、「ユーティリティ性」で貢献する浦野
富士通は2年前のニューイヤー駅伝優勝チームだが、前回は12位と敗れた。インターナショナル区間の2区で20位まで後退したことも響いたが、4区の中村匠吾(東京五輪マラソン代表)が区間26位で19位に後退、5区の鈴木健吾(マラソン日本記録保持者)も区間10位と振るわなかった。

富士通の高橋健一監督は「(浦野以外の)マラソン組に無理をさせてしまった」と説明する。「走れているメンバーを外して(調子が上がっていなかった)中村と鈴木を入れてしまったんです。駅伝も勝てず、マラソンの2人もその後ケガをした。今回は、そこははっきりさせていきます」

2年前の優勝は4区の中村が区間2位でトップに立ち、6区の鈴木が区間賞でダメを押した。2人の駅伝優勝への貢献度は大きかった。

坂東は中村と鈴木が出場しないことについて、次のように話した。
「2人と一緒に頑張った方が優勝に近づけますが、富士通は個人としてもレベルの高いところでやっています。2人の個人種目の目標を尊重したい。一緒にやれないのは残念ですが、2人にはマラソンの方で頑張ってもらいたいですし、2人がいないからといって優勝できないわけではありません。今年からキャプテンをやらせてもらっていますし、駅伝では絶対に優勝したい」

個人としては、2年前の優勝時に走った3区を希望している。区間6位だったが、トップと4秒差の3位にチームを押し上げた。

「2年前はぎりぎりで先頭集団に追いつきました。もう一度3区で、今度は区間賞を目指して走りたい」

浦野は2年前の優勝時に、アンカーの7区で区間賞。鈴木からトップでタスキを受け危なげなく逃げ切った。前回も同じ7区を走ったが、14位と予想外の順位でタスキを受けたこともあり、12位に上がるのが精一杯だった。今回も同じ7区希望かと思ったが、「希望区間はありません」と話す。

「僕は駅伝を戦う上で、学生(國學院大)の頃からそうでしたが、チームの足りないピースになれれば、と思ってやってきました」

浦野は集団走も単独走も、追い風でも向かい風でも、上りでも下りでもしっかり走ることが特徴だ。

「そういうユーティリティ性で貢献したい」

浦野の復活は、富士通のV奪回に向けても大きなピースとなる。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)