クマは警戒心が高い動物
Q.なぜクマは人を攻撃する?
従来、クマが人間を攻撃するっていうのは、基本的に防御を目的にした攻撃なんですね。例えば、母クマが子グマを守ろうとして攻撃するとか、人間と鉢合わせしてパニックになって攻撃するとか。まだその検証が十分できてないですが、多くの事例が、やはり防御を目的にした攻撃っていうのが多いと考えられます。
通常の状態であれば襲ってくることはないです。ただ、人がおいしいものを持っているとか、そういった特殊な経験が積み重なっていき、人への警戒心が極度に下がって、何かのきっかけで人を食べることを学んでしまうと、クマの方の意識も変わってくる。クマは賢い動物で過去の経験を元に行動が決まってきます。
ただ、集落の近くの裏山で生まれ育ったクマは、山奥にいるクマに比べると人への警戒心が下がってきてる可能性はあります。今年の東北地方の状況を見ていると、街中で平然と行動しているクマなんかはもう人への警戒心が下がり切ってる可能性はあります。
集落に残されたカキとかクリっていうのも、本来であればクマと接点がないが、人が集落からいなくなることによって、カキの味を覚え、街中にカキ食べに出てくる可能性もあります。放棄果樹っていうのもクマと人との距離を縮めクマの警戒心を下げる要因にはなっていると思います。
昔は狩猟をする人が山に入ってクマを追いかけ回すとか山の管理も盛んに行われていたので、やはりクマはそういうのを見ると、これ以上近付くのは嫌だなっていうのが、緊張関係を築く上ではあったと思うんですね。だから、逆に人間がクマを恐れて山に入らなくなることで、緊張関係が緩むことにつながるので、過度に恐れて山に入らないっていうのは逆に良くないと思います。実際、今年街中では多くの事故が起きていますが、山菜採りの人や林業をされている人の事故の件数は例年通りなんですよ。
Q.目撃件数が増えたってことは、個体数も増えた?
実はまだ日本でクマの正確な数は出ていないんですけれども、ここ50年とかで見た時に、山奥の環境が劇的に変わってるかっていうと、最近はゴルフ場やスキー場の開発がたくさん起きてる訳ではない。そう考えると、長期的に徐々に右肩上がりでクマの数は増えていると考えるのが自然だと思います。
Q.静岡県内でもクマに襲われることはあるのか?
確かに2025年は目立ちますし、昨年は近畿地方でも同じこと起きているということで、遠い所で起きているように感じるんですが、静岡でもこの40年で分布は広がってきているんですね。さらに単発的ですが、伊豆半島にクマが入ってきている。そう考えると、現時点では静岡の街中に来ていないんだけれども、いつ起きてもおかしくないですね。
ただ、クマは冬眠するので、あと1か月~1か月半ぐらいすると、このクマの問題はだんだん終息していくと思います。
一方、長期的に考えると、静岡でもやはり里山や集落からの人の撤退は起きていて、カキとかクリの放置も起きているっていうことを考えると、東北ほどではないかもしれないが、「まさかこんな所にクマが…」っていうようなことが起きる可能性はあります。














