全国で相次いでいるクマ被害ですが、深刻なのは被害の多くが市街地で相次いでいることです。熊に襲われる人も相次ぎ、死者は過去最多となっています。クマはなぜ人を襲うのか、被害に遭った男性の証言から考えます。

■クマによる死傷者過去最多 小学校のガラス破られ「臨時休校」も

2日朝、福島県内の住宅の敷地内で80代の男性がクマに襲われ、けがをしました。命に別状はないということです。

隣の家に住む人
「(男性は)頭部からも出血していて」

1日午後7時ごろ、札幌市内の住宅街にクマが現れました。

人を恐れず、生活圏内に入り込むクマ。

山形県・南陽市の小学校では、クマが玄関のドアに突進。ガラスが破られ、臨時休校となりました。

クマに襲われる人も相次いでいて、環境省によりますと、2025年4月以降、被害者の数は全国で100人を超え、死者は過去最多の12人に上っています。

実際に襲われると、どうなるのでしょうか。その様子を撮影した被害者がいます。

岩手県岩泉町に住む佐藤誠志さん(59)がクマに襲われたのは2023年9月、キノコ狩りの最中でした。

「九死に一生」を得た佐藤さんが語る、クマの“恐ろしさ”とは。

■「あの時、木の棒がなかったら…」2年経った今も残る傷

クマに襲われた佐藤さんは木の棒で応戦しますが、クマは何度も飛びかかって攻撃してきました。

クマは運よく逃げていきましたが腕をかまれてけがをし、太ももを爪でえぐられました。2年経った今も傷の跡が残っています。

佐藤さん
「クマには、小さいクマでも絶対勝てない。もしあの時、木の棒がなかったら、顔はめちゃくちゃだったと思う。スイッチが入っているクマはどうしようもない。本当にやられるだけ、本当に怖い」

キノコ狩りなどを生業とする佐藤さん。

佐藤さん
「(クマから)パンチが来ても重傷にはならない」

山に入る際は必ず、フェイスガード付きのヘルメットをつけます。さらに…

佐藤さん
「(鈴が)わざと膝に当たるように」

クマよけの鈴2つに、警報音を出す装置。そして、撃退用のスプレーを携帯。

佐藤さん
「視界が悪いところに行ったら『はっ!』」

山の中では時折り声を出し、警戒しながら歩きます。

山で30年以上、仕事をする佐藤さん。2025年に感じた“ある異変”があります。

■「山にどんぐりが見えない」 どんぐりが「大凶作」で人里に…?

佐藤さん
「山に(クマのエサとなる)どんぐりが見えない。2024年は山を歩いているだけで、どんぐりが落ちてきた。2025年は1個もない」

林野庁の推計では、猛暑などが続いた2025年、東北の5つの県でクマの主食であるどんぐりが「大凶作」に。この影響からか、佐藤さんは「山でクマを見ない」と話します。

佐藤さん
「(クマの)足跡すらあまりない。(クマは)みんな里の方に行っている。腹減りすぎてる。本当に飢えていると思う」

秋田県のまとめでは、2025年、クマに襲われた56人のうち、大半の54人が「人里」で被害を受けています。