実をつけないキンモクセイが「開花」にエネルギーを使うのはなぜ?

ーキンモクセイは、花は咲いても実がなりませんね。

東洋産業 大野竜徳さん
「日本で見られる園芸品種であるキンモクセイは、ほぼすべて雄株由来で、雌株が存在しない(雌は極めて稀)とされています。

そのため、花は咲いても実(果実や種)はつきません。庭木のキンモクセイに実がないのはこのためです。近縁のギンモクセイには雌雄があり、雌株は果実をつけるのですが」

東洋産業 大野竜徳さん
「キンモクセイが自分では繁殖できないけれど、開花するというのは、生き物の在り方そのものに切り込むテーマともいえます。

私たちを含め、生き物の究極の目的とは何でしょうか。それは『自分の遺伝子をより多く次世代に残すこと』。すべての生物はこの一点に向かって、長い時間をかけて戦略を磨いてきました。

絶滅すれば、その系統の物語はそこで途絶えます。

他の生き物、同種のライバル、異性とのせめぎ合いの中で選択が繰り返され、その結果として私たちが今見ている生物の姿があります。

つまり、自分では子孫を残せないとはいえ、いまも生き残っているという事実そのものが、彼らの戦略の『正解』という見方ができます」

ーでは、キンモクセイにとっての「幸せ」とは何でしょう

東洋産業 大野竜徳さん

「キンモクセイやソメイヨシノといった園芸植物の一部は『不稔(ふねん)』、つまり自力で種子を作ることができません。しかし、キンモクセイの園芸品種は、日本中に広まっています」