「甘い香りでヒトに好まれ、ヒトによって接ぎ木で増える」という生存戦略?

東洋産業 大野竜徳さん
「不稔の植物は、野生では子孫を残せず、その個体の死とともに滅びる運命ですが、人の手によって接ぎ木され、街角や庭先に植えられ、結果的に日本中に広まりました。

もし、キンモクセイが工夫しても花を咲かせなかったら、人は植えようとも思わなかったでしょう。花を咲かせることで自分で実をつけなくても、人に選ばれ、殖やされ、守られている。

そう考えれば、彼らは人間という共生相手を手に入れた、成功者ともいえます」

「キンモクセイ本人に意見を聞いたわけではありませんが、生物学的に見れば、彼らは人間を媒介して遺伝子を広めることに成功した生物といえるでしょう。

もしかすると、私たちが花の香りに惹かれて植え広めているつもりが、実はキンモクセイの戦略にまんまと乗せられているのかもしれません」