静岡県内で最も多い人口約80万人の浜松市。その最北端に過疎化と高齢化が進む水窪町があります。ここでスーパーを切り盛りする若手の夫婦が地域の実情に寄り添い住民の日常を支えています。
水窪町にあるコンビニサイズの個人商店「スーパーまきうち」。社長の牧内真美さん(36)、店長の基さん(46)の夫婦が静かな山あいでにぎやかに営業しています。
<牧内基さん>
「いきますよ!せーのっ、よいしょ~!」
毎年恒例となった「山でまぐろ祭り」では県内外の人を水窪に呼び込んでいます。
町を元気づける取り組みで注目を集める「まきうち」ですがもっとも大切にしているのは住民の生活に寄り添うこと。
<牧内基さん>
「おう、うめちゃん!」
<大倉うめ子さん(96)>
「呼ばった?」
<牧内基さん>
「呼ばったよ。きょう早いなと思って。元気?」
<大倉さん>
「元気だよ。ここに来れるうちは元気」
<牧内基さん>
「良かったよかったそれなら。また来てよ!」
この日に来店したのは大倉うめ子さん96歳です。デイサービスから戻った後「まきうち」でおかずを買うのが楽しみです。大倉さんは1人暮らし。家の中には遠く離れた町から認知症を気遣う息子夫婦の書置きがいたるところに貼られています。そんな大倉さんが毎日つけている日記です。
<大倉さん>
「これ『お祭りの寄付が千円組長さんが来てくれた』って書いてある。本音はこれ。『何かがよくわからなくなって辛い』って書いてある。ここがどうかなってねえ。わからんくなる時あるよ」
水窪は人口の約7割が65歳以上の高齢者です。
<記者>
「まきうちのおかずのお味はどうですか」
<大倉さん>
「食べ慣れてるしいいよね。あのお兄ちゃんがいい人でね、おるときっと声かけちゃくれる。『無理せんなね』って」
「まきうち」は店に通うのが難しいお年寄りのために無料で商品の配達を請け負っています。
<牧内真美さん>
「こんにちは。これで大丈夫そう?置いといていい?どう調子は」
<竹下昭治さん(77)>
「治らんなあ」
<牧内真美さん>
「元気そうに見えるのに」
竹下昭治さん(77)は半年ほど前に脳梗塞で病院に運ばれ、その後遺症で生活には杖が欠かせません。自宅から「まきうち」までの約300メートルが厳しい道のりになりました。
<竹下さん>
「包丁を持つったって、物と包丁と両手を使わなきゃいかんから。杖が使えないんだもん。まあ大変だよね。生きるっていうのは大変」
<牧内真美さん>
「本当はもっともっとやってあげたいんだけど、なかなか。『ありがとう』って言われることにすごく喜びがあるかっていうよりも、ああやってお客さんと喋れることの方の喜びが大きい。うん」
人口1500人を割ろうとしている水窪町。牧内さん夫婦は「ふるさと」に暮らす住民1人1人に寄り添い続けています。














