盛岡市では銀行にクマが居座り、大学構内にもクマが出現。クマによる被害“クマ害”が相次ぐ中、秋田県知事が自衛隊の派遣を要請しました。「クマの駆除」に自衛隊はどこまで関わることができるのでしょうか?

「これなんだ?」「クマだ!」

走って建物に入っていくクマ。すぐ近くには自転車に乗った人もいます。警察などによると、28日午前7時ごろ、岩手県盛岡市の「岩手銀行本店」の駐車場に子グマ1頭が侵入。現場は県庁や裁判所などが立ち並ぶ市の中心街で、周辺では27日、親子のクマの目撃情報が確認されていたといいます。

盛岡市環境企画課 渡辺聡 課長補佐
「地下駐車場のエリアなのでライフル銃の使用は無理。麻酔捕獲によって不動化して」

侵入から、およそ3時間後…。麻酔で捕獲された子グマ。体長はおよそ1メートルで、その後、駆除されたということです。

ただその直後、新たなクマ出没の通報が…。子グマが侵入した岩手銀行から直線でおよそ2キロ離れた岩手大学。警察や大学によると、28日正午ごろ、大学構内で学生がおよそ1メートルのクマ1頭を目撃。警察に通報しました。

クマは一時、構内にとどまっていましたが、行方は分かっていないとのことです。

学生
「こんな生活圏まで下りてくるんだな、怖いですね」

街なかでも出没が多発するクマ。至近距離でクマと出会ってしまった…。そんな時とるべきなのが、うつ伏せになって頭や首を守る姿勢だといいます。

この姿勢は、秋田大学大学院などの研究チームが実際にクマに襲われた人のデータを調べ、発表したもので、2023年度の秋田県のクマ被害データを調べたところ、被害者70人中、23人が重症者でした。

しかし70人中、7人は「うつぶせ防御」姿勢をとり、重症者は一人もいなかったということです。

秋田大学整形外科 石垣佑樹 医師
「完全に安全な姿勢ではないが、実際にクマと至近距離で遭遇した時に、自分の命(の危険)を少しでも防げるような防御姿勢につながるのでは」

この姿勢は、被害の予防、軽減策の一助となることが期待されているということです。

こうした中、自治体も新たな対策に動きました。秋田県の鈴木知事は小泉防衛大臣と面会し、クマ被害への支援のため自衛隊の派遣を要請しました。

秋田県 鈴木健太 知事
「防衛省・自衛隊の力を借りなければ、国民の命が守れないという状況に今なっております」

その小泉大臣はクマによる被害をこう呼び、危機感を強めました。

小泉進次郎 防衛大臣
「これは防衛省だけでなくクマ害といいますか、どのように向き合うかを政府全体で考える必要性も出てきてる」

鳥獣対策で自衛隊が派遣されたことは、過去にもあります。

2011年、北海道・白糠町ではエゾシカによる農作物の食い荒らしなどが“災害級”の被害になったため、自衛隊に協力を要請。自衛隊はヘリコプターを使ってシカの位置を伝えたり、死骸を運んだりする作業を担当したといいます。

しかし、1959年には自衛隊がトドに機銃掃射を行っていました。この時、北海道・新冠町ではトドがアミを食いちぎるなどの被害が深刻化。町によると、地元の漁業組合が駆除に失敗したため、当時の新冠村が自衛隊に駆除を頼んだといいます。ただ、町の資料館によると、当時の射撃の名目は「駆除でなく訓練だった」といいます。

今回、秋田県が要請した支援は、武器の使用を伴わない罠の設置や捕獲・駆除したクマの輸送など。秋田県側は「自衛隊の派遣に前向きな回答をいただいた」としています。ただ、小泉大臣は…

小泉進次郎 防衛大臣
「自衛隊は何でも屋ではありませんから、過度な負担が様々増えて、本来、最も大切にしなければいけないこと、(国防の)練度が下がったり、熟度が下がるようなことがあってはならない」