刻々と時間が減っていく。そんな不思議な時計が世界の様々な場所に設置されています。日本でも若者たちが、東京・渋谷に100台設置しようと動き出しました。一体この時計は何を示し、なぜ設置を急いでいるのでしょうか。

■タイムリミットまでたったの7年半しかない

残り時間7年215日23時間22分00秒(日本時間2021年12月19日午前現在)。

今年11月に行われたCOP26では地球の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5度に抑えることの必要性が強調されました。気温上昇による悪影響は、既に熱波、干ばつ、豪雨などの災害を引き起こしているとされますが、平均気温の上昇が1.5度を超えるとさらにそのリスクは大きく上がり、植物や生物の生息域が減少することで食生活に影響が出たり、住む場所を失う人も増えると言われています。
今のままのペースで温室効果ガスの排出が続けば、1.5度の上昇を防ぐために残された時間は“たったの7年半”という研究機関の報告があり、ニューヨークや、COP26の開催地イギリスのグラスゴーなどには、このデッドラインまでのカウントダウンを続ける大規模な「気候時計」が設置されています。

米ニューヨークの気候時計(2020年)


■日本にも気候時計を作りたい


この「気候時計」を渋谷に100台設置する!そんな活動を始めた高校生と大学生の4人のグループがあります。メンバーの一人、ナイハード海音(みお)さん(18)は17歳のときニューヨークの気候時計を目にし、タイムリミットが想像以上に早いことに驚きました。「7年後・・・まだ自分は24歳。そんなに早く気候変動の問題がタイムリミットを迎えてしまうなんて、もう本当に私の人生なんなんだ」と初めて気候変動の問題を自分の人生にひきつけて考えることができたのだといいます。そこから、日本にも気候時計を作ることで、多くの人に気候変動のことを“自分ごと”として捉えてもらいたい、とこれまで一緒に気候変動の活動を行ってきた友人たちと「気候時計設置」のプロジェクトを開始しました。

気候時計設置を目指すa(n)actionのメンバー 左下がナイハードさん


■アクションする人を応援する人たちが必要

ナイハードさんとともに活動する大学生の酒井功雄さん(20)は11月、COP26開催中にグラスゴーを訪れました。グラスゴーの街ではバスの運転手や駅員などに「大事なことをしてくれてありがとう」といった声を掛けられ、感銘を受けたといいます。「彼らはおそらくデモなどには参加しないんだろうけど、そういう人たちも参加している人たちのことを“いいことやってるね”って思えるようなムードがある」。環境問題について行動する人たちを暖かい目で見守り、応援する雰囲気を日本にも広げたい。「そのために日常の中で早く気候変動の危機について気付けるきっかけみたいなものを作りたい」と感じたといいます。

COP26開催中 グラスゴーで気候変動アクションに参加した酒井さん


■“フェスに行く感覚”で気候変動アクションを

酒井さんたちはこれまで、「気候変動マーチ」というデモ行進を行ったり、小泉進次郎前環境相との意見交換会など政治家に向けた政策提言を行ったりしてきました。ただ、これまでの活動はなかなか輪を広げることが難しく、「意識高いね」「すごいけど、私たちがやることじゃない」などと言われて、周りの人たちとの分断を感じることがあったといいます。

COPに行って感じたのは「海外の人たちはもはやフェスに行くような感覚で気候変動アクションをやっている」ことだったという酒井さん。自分たちの日本での活動ももっと親しみやすいアプローチを作って「気候変動アクションは普通に楽しくできる、というふうにしたい」と話します。

そこで、今回の活動では
▼若者の多い街「渋谷」のあらゆるところ(トイレ、レジ横、エレベーターホールなど)に100個の気候時計を置くことで、普段気候変動に関心のない人にも“何か変なモノがあるな”とまずは気づいてもらうこと
▼時計と一緒に置くQRコードから、気候変動についてのウェブサイトに飛べるようにし、見た人がワンタップで「いいね!」「それな!」など気軽に参加できる仕掛けを作ること
などを考えているのだといいます。
「普段遊んでいる渋谷に気候時計があることをきっかけに、気候変動アクションをすることが”イケてる”ことと思ってもらいたい。カルチャーの一部にしていきたい」と話します。気候変動は一部の人たちだけで解決できる問題ではないと考えているからです。

■クラウドファンディング 目標は大きく1000万円

今回、気候時計を作るための資金はクラウドファンディングを通して募っています。時計の作成のほか、ウェブサイトやドキュメンタリー映像の制作費も含めた目標額は1000万円。当初無謀な数字にも思えたといいますが、募集開始から10日の12月6日までに4分の1にあたる250万円を達成しました。メンバーたちは想像以上に応援が集まっていることに加えて、「日本に気候時計欲しかったんです」という複数のコメントを見て、「絶対作らなきゃ」という気持ちが高まっているといいます。「クラウドファンディングの期限となる来年1月27日までに絶対実現して、日本でも若者の力でここまでできた、というケースを作りたい」と気合を入れていました。