年々、依頼が増加し、注目を集めている退職代行サービス。きょう、高いシェアを誇る「モームリ」を運営する会社などに、警視庁が弁護士法違反の疑いで家宅捜索に入りました。元従業員は取材に「違法行為を口外しないように言われていた」と証言しました。

モームリの元従業員
「事実を説明する責任はあると思うので、捜査への協力もしっかりしてほしいと思っている」

こう語る女性がかつて働いていたのは、退職代行サービス「モームリ」。依頼者本人に代わって、会社に“退職の意思”を伝えるサービスを提供しています。

これは、会社の公式動画…

モームリ
「(ご依頼者様)から依頼を受けまして、退職希望の旨とそれに伴い、今後、出勤ができない旨、こちらをご本人様に代わりお伝えさせていただきたく、ご連絡をしました」

きょう、この退職代行サービスに捜査のメスが入りました。

記者
「午前9時すぎです。退職代行運営会社の本社に、今、警視庁の捜査員が家宅捜索に入りました」

警視庁が家宅捜索を行ったのは、「モームリ」の運営会社「アルバトロス」の本社や都内の法律事務所など複数の関係先。捜査員およそ100人態勢で、一斉捜索に乗り出したのです。

アルバトロス 谷本慎二 社長
「タイピング音がうるさい、ドアを閉める音がうるさい。実際に退職理由としてめちゃくちゃあります」

こう語っていたのは、創業者の谷本慎二社長。

「モームリ」では、依頼者に代わって企業の担当者に退職の意思を伝え、有給休暇の日数や退職に必要な書類を確認するなど、退職の手続きを代行するサービスを提供。2022年のサービス開始以降、累計利用者数は4万人を超えているとしています。

サービス紹介の動画には、給与や有給に関するやり取りも。

モームリ
「有給はいつ振り込みをしていただけるのでしょうか」

先方
「何の連絡もなしに、翌日から来ないってどういうことなんですかね?これ」

モームリ
「有給の取得時期をずらす時期変更権を会社が行使することはできないので」

先方
「金額を教えてください」

モームリ
「こちらは会社で計算をして、その額の振り込みをお願いいたします」

今、利用者が拡大している「退職代行」サービス。東京商工リサーチによると、「退職代行」を利用した退職は大企業の15.7%が経験している一方で、専門家は、内容によっては法律違反になると指摘しています。

東京弁護士会 小町谷悠介 弁護士
「残業代の問題とか、退職に伴う法的な問題が発生したときに、それを(弁護士資格のない)業者さんがそういった話を突っ込んでしてしまうと『非弁行為』ということで、違法になる可能性がある」

弁護士法では、弁護士資格を持たない人が報酬目的で法律事務の仕事をあっせんすることを「非弁行為」として禁止しています。

「モームリ」について、捜査幹部は。

捜査幹部
「非弁行為は組織的に敢行されたものであり、悪質巧妙である」

捜査関係者によると、運営会社「アルバトロス」には、弁護士に「退職代行」の仕事をあっせんし、紹介料を受け取った疑いがあり、強制捜査に至ったということです。

きょう、元従業員がJNNの取材に応じ、社内の雰囲気について、次のように明かしました。

モームリの元従業員
「(社内では)誰かが誰かのミスを探しているような状況なので、ずっと気を張っていなきゃいけないんですよね」

谷本社長については、こんな証言も。

モームリの元従業員
「弁護士にあっせんすれば、1万6500円のバックが入るから、売り上げにつながるし、ちゃんと紹介してねということを社員全員の前で言われた」

記者
「違法な行為だとわかってやっていた?」

モームリの元従業員
「そうですね。『違法行為だから、絶対、会社外で口にしないでね』って。(社長は)完全に違法だということは把握しています」

女性はこうした状況に危機感を持ち、「モームリ」を退職したと語りました。

捜査関係者によると、「モームリ」をめぐっては、ほかにも、残業代の請求など法律に関わる交渉を行う「非弁行為」の実態を把握しているということで、違法性のある業務がほかにないかなど捜査を進める方針です。