◆120年ものの「型」からキカイの音

どこか懐かしい音も聞こえてきた。ガランガランと少し湿った音を上げながらせわしく動くキカイ。120年ものの「型」は現役だ。できあがったまん頭を切り離すとサクッと乾いた音がした。「代々受け継がれているもので大切な音です」守り繋ぐ“味”と“音”だった―。

強く、腹から出された息。視線は一点から揺らがない。えい!のかけ声で道着がこすれ、厚手の生地がなった。浜辺の気温は7度、水温は18度。腰まで海につかり「泣いたらあかんで」。声を張ることで寒さを紛らわせる。空手の寒稽古は、精神力と忍耐力、礼と節があわさった音にあふれていた。
◆神事は音の宝庫

映像に「第九」が重なる。第4楽章に「時流が厳しい時に、引き裂いていたものを結び合わせる」という歌詞がある。感染症で集まることを制限された今を生きる私たちを励ますメッセージにも思える。

火祭りの神事は音の宝庫だ。鈴がなり、神職が笛をふき、そして炎が上がり炭がはぜた。「Beautiful Experience」と外国人が舌を巻いた。「いい子になります」とインタビューに答える子供。疫病退散と祈りの音だ。

「今年も冬が来たなという感じがしますよね」パンとはじけたのは牡蠣。日が暮れると拍子木を打つ音が町内に響く。「みんなで力を合わせて安心安全」、夜警だ。

寒い夜に“行きたくなる”音もある。屋台から聞こえる麺をすする音だ。