街は音であふれている。ハッと振り向く大きな音もあれば、聞こえているはずなのに無意識にスルーしているものもある。そんな気にも留めない身近な「音」を紡いだら、新たな師走の街が浮かび上がった―。

◆耳をすますと聞こえた何気ない「音」

ラジオが遠くでなっている「強い寒気が流れ込む見込みです」。甲高い声が飛び込む「おはようございます!」
登校する子供たちが横断歩道を走って渡った。
ターミナル駅でホームを歩く人たち。手入れの行き届いた床材を踏む靴の音が、一定のリズムを奏でていた。どこにでもありそうな冬の一日。耳をすますと聞こえてくる。
「歳末助け合い運動が始まりました」
市街地の呼びかけの音。
「寒いですが気持ちだけはあったかく」
温かい励ましの音。
落ち葉が風に吹かれ、それをほうきで掃く人がいる。季節が移ろう音だ。
カチカチと指が動くたびに数字が回る。年末の交通量調査の一幕。調査員がつぶやく「増えているね」と。戻りつつある街を実感する音。