◆「主人公を豊かに立ち上げる」介添え役のバイプレーヤー
この映画にはいろいろな方が出ています。安藤サクラさん、いいですね! 本当に魅力的です。妻夫木さんも福岡県にも縁がある方。窪田さんも「朝ドラの時よりいいな」という感じ。切なく、陰ある男を演じて、非常に心を打つ役割を果たしました。

その窪田さんを盛り上げる脇役、バイプレーヤーのカトウさんがいることによって、主人公が際立っていく。カトウさんは「主人公たちが豊かに立ち上がっていく」とおっしゃっていましたけど、立ち上がる横で介添えをしているのが、脇役の役者さんたちなんだなあと感じました。
どちらかと言うと、カトウさんは主人公を張るタイプではないかもしれません。だけど、いい役者になっていろいろな映画の裾野を広げてくれるんじゃないかという気がして、期待しているんです。
カトウ:役が大きかろうが小さかろうが、メインだろうがワンシーンだろうが、向き合えるもの、自分の人生を注ぎ込める役に出会えるのが幸運だな、と思います。それがワンシーンでも、よくも悪くも目立つ顔かもしれなくて。「ある男」みたいな大手配給会社の大きな作品にもお声掛けいただけることも増えてきたし、インディーの作品も多いですし、ありがたい状態です。
カトウ:顔のインパクトで覚えられるけど、(役柄を)決め付けられないでいられるのは、すごい得。「あの人、怖い役やらせたらすごいよね」とか、「演技派だよな」「誠実な役ならすごいよね」とか、「陰がある役といえばカトウシンスケだよね」とかではなくて、どれをやってもハマるし、強烈なインパクトを残すけど、どれにも染まれるというか。そこまで自分の芝居というか、身体が高められ深められたら、それは面白いかもなって思ったりしていて。何か、捉えられきれない者になっていけたらいいなと、ゆくゆくは。
学生の時から、演劇サークルに入っていたそうです。「何か表現する者になりたい」と思って、勤めていた会社を辞め、劇団に入ったりしながら、僕が会った35歳くらいまではほとんどアルバイトという世界だったそうです。
映画『ケンとカズ』で知られるようになって、ちょこちょこ出られるようになって、今ではほぼ俳優で暮らしていけるようになってはいるそうです。無名のころから見ていると、こういう大きな映画に出てくるのはすごくうれしい。「カトウシンスケ」という、個性派の俳優。これからいろいろなところで活躍していくかもしれないですよ。
映画『ある男』
https://movies.shochiku.co.jp/a-man/
俳優カトウシンスケ公式HP
https://www.katoshinsuke.com/
神戸金史(かんべ・かねぶみ)
1967年生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。東京報道部時代に「やまゆり園」障害者殺傷事件を取材してラジオドキュメンタリー『SCRATCH 差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』を制作した。