アユ釣りの聖地ともいわれる狩野川ですが、訪れる釣り人はここ数年で激減しています。その背景にあるのが大型の鳥「カワウ」です。

状況を変えようと関係者は日々やっかいものと向き合っています。

10月13日の狩野川。天気も川の流れも穏やかでしたが、釣り人の姿はまばらです。

<アユ釣り歴40年の男性>
「ここんとこ、狩野川はずっと釣れてないからね。みんな食われちゃってる。困るよね。ライバル」

ライバルの姿は下流にありました。

<東部総局 竹川知佳記者>
「いました、川の中央に黒い影がたくさんあります。30羽以上はいるでしょうか。水の中に潜って魚を食べているようです」

正体は「カワウ」です。カワウは体長80センチほどある大型の水鳥で群れで行動します。魚より速く泳いで1日に10匹から30匹の魚を食べるといわれています。

日中は狩野川で狩りをし、静岡県東部の各地にある山のねぐらに帰ります。

<竹川知佳記者>
「すごい量出てきました、50、60羽いるでしょうか。至る所の木からカワウが飛び出してきました」

静岡県によると、県内のカワウの数はこの10年で倍以上に増えています。

<長岡技術科学大学 山本麻希准教授>
「1970年代に3000羽だった頃は、全国で3か所しか集まる場所はなかったといわれている。そういったところから徐々に徐々に、いたところからいないところへ、だんだん広がっていったっていうのがあるので、被害エリアとしてはどんどん広がっていったんだと思います」

空からネットをかけ、巣作りを阻止したり、卵に石鹸水をかけて、ふ化を防ぐなどの駆除活動を日本各地で行った結果、アユが豊富にいる狩野川にも逃げてきたとみられています。

アユ釣りの聖地ともいわれた狩野川は、カワウによる漁業被害が年間5000万円にのぼるとみられ、この5年で釣り人が半分近くに減りました。狩野川沿線の店ではロケット花火や運動会で使うピストルの音で追い払う対策をしています。

<おとり店「アルバトロス」 鈴木充さん>
「東京や横浜から来たお客さんのためにカワウを降ろさないようにやってる。絶対減ってほしいよ」

漁協などは県の許可を受けてカワウにGPSをつけて行動を把握し、駆除しようとしています。

<狩野川漁業協同組合 井川弘二郎組合長>
「GPSを付けて、まずはカワウの動きを調査する。そうしないとどういう対策をしていいのか分からない」

この日はおとりのニジマスに針を付けてカワウをおびき寄せ、捕獲を試みましたが、仕掛けにかかっていませんでした。

<漁協関係者 梅原朋也さん>
「(なかなかうまくいかないですね)いかないですね、ダメですね。もう運の要素がすごいもので、仕掛けたところにカワウが来てくれるか来てくれないかで今年は来てくれなかった。

来るタイミングで、人が作業しててカワウが避けちゃったり、カワウが飛んできたのにカヤックが通っちゃったりして、運が悪かったですね」

間もなく終わるアユ釣りのシーズン。2026年のアユ釣りの解禁に向けて人とカワウの戦いは続きます。