電力会社や水道に頼らず、電気と水を100%自然からまかなう宿泊施設が静岡県沼津市にオープンします。観光体験の中に社会課題の解決が溶け込んでいます。

<東部総局 金原一隆記者>
「駿河湾を望む風光明媚な沼津市の高台に誕生したのは、自然のエネルギーを最大限に利用するリゾート施設です」

10月9日に内覧会が行われたのは静岡県沼津市戸田の「WEAZER西伊豆廻‐KAI‐」。

11月1日にオープンする宿泊施設です。水をたたえる「水盤」を備えたテラスがあり2つの寝室とリビングで広さは150平方メートル。食事など全て込みで、1人1泊44万円という一棟貸しの宿です。

<ARTH 高野由之社長>
「世界に先行して『完全オフグリッド』な現代的なリゾート施設を僕たちは持っているので、そのデータをよりためていくと」

送電網(グリッド)から切り離す(オフ)、オフグリッド。この宿の最大の特徴は、電力会社の電気も水道の水も使わずに、エネルギーも水も100%自給できることです。

<高野社長>
Q. すぐ横に電信柱がありますが、電気はここからはとっていない?
「既存の電線から一切電気をとらず、普通に見えるWEAZERの屋根、これがソーラーパネルになっている。この屋根が、建物に必要なエネルギーの全てを吸収し、かつ屋根に降り注いだ雨を集めて、きれいな飲み水に変えることができます」

「WEAZER」というシステムでは、屋根の太陽光発電パネルで作られた電気で、照明や給湯、調理など全ての電力エネルギーをまかない、CO2は排出しません。水は、屋根に降った雨水を集め、「水盤」の下にある水槽に貯めて利用します。雨水をろ過し、滅菌処理した水がシャワーやキッチンなど生活用水として使用できます。

この宿では、一度「電気で作った熱」は無駄にしません。

<高野社長>
「この建物の中で捨てられてしまっていた熱を再利用する、そういった特殊な仕組みを開発しました」

この宿ではシャワーや風呂の温かい排水、空調や暖炉の熱を回収して、再利用。電気で熱を作ることを減らし、電力の消費量をおさえています。

<高野社長>
「観光体験という中に社会課題解決を溶け込ませることが、すごく世の中にその課題解決を広げていくコツかなという風に思っていますので、よりたくさんの方に来ていただきたい」

エネルギーを100%自給できる宿。社会インフラに頼らずに生活できることから防災目的の施設にも応用できる技術としても注目されています。