ふるさと納税による収入を理由に、国が泉佐野市への地方交付税を減額したことの是非が問われた裁判。“そもそも裁判で争える事案なのか”も争点となり、複雑な経過をたどっていましたが、10月9日の差し戻し審の判決で、大阪高裁は国の控訴を棄却。

 減額決定の取り消し請求が認められた形で、泉佐野市が“勝訴”しました。


 大阪府泉佐野市は2019年度、ふるさと納税制度で多額の寄付金を集めたことを理由に、国が地方自治体に交付する「地方交付税」を、前年度から4億円以上も減額されました。

 泉佐野市は、この減額決定は違法だとして、取り消しを求めて提訴。

 1審の大阪地裁は2022年、泉佐野市の請求を認め、国に決定の取り消しを命じました。

 この判決を不服として、国は控訴。2審の大阪高裁は2023年、「裁判で審理すべき対象ではない」として、1審判決を取り消して市の訴えを却下。すなわち“門前払い”しました。

▽最高裁は“裁判の対象になる”と判断 高裁に差し戻し

 逆転敗訴した泉佐野市は上告。最高裁第一小法廷は今年2月、「地方交付税の額の決定の取り消しを求める訴えは法律上の訴訟にあたる」、つまり、裁判の対象になるとして2審判決を破棄。大阪高裁に審理を差し戻す判決を言い渡していました。

▽差し戻し審で泉佐野市が“勝訴”

 きょう10月9日の差し戻し審判決で大阪高裁(牧賢二裁判長)は、「ふるさと納税による収入が一定額に及ぶことを地方交付税の減額要因となる事情とすることは、地方交付税法の文脈に照らすと、国への委任の範囲内にあるとはいえず、違法」として、国の控訴を棄却しました。

 つまり、減額決定取り消し請求が改めて認められた形となり、紆余曲折を経て、泉佐野市が再び“勝訴”しました。

▽泉佐野市長「国の交付税行政をただす意義があった」

 判決を受け、泉佐野市の千代松大耕市長は「この判決は、ふるさと納税の寄附を標的にした総務大臣の法の委任の範囲を超えた恣意的な処分に対するものであり、国の交付税行政をただす意義があったものと思っております。本件の対象となった違法な総務省令は現在も引き続き存在することから、これを即時に廃止することを望むものであります」とコメントしています。