男子20km競歩の山西利和(29、愛知製鋼)が、東京2025世界陸上で自身3個目の金メダルを目指す。山西は世界陸上初出場の19年ドーハ大会と、22年オレゴン大会で連続金メダルを獲得。しかし23年ブダペスト大会は24位と涙を呑み、昨年は選考レースの日本選手権20km競歩で自身初の“歩型違反”により失格、パリオリンピック™代表も逃してしまった。
しかしそこから立て直し、今年2月の日本選手権20km競歩で1時間16分10秒の世界新記録を叩き出して優勝。6月の取材で、今年の世界陸上に懸ける思いを語った。
苦しんだ厚底シューズに対応
4回目の世界陸上に向かう思いを聞かれると、山西から次のような言葉が真っ先に出た。
「この2年の間に色々なことが自分の中ではあったので、これまでの3回の世界陸上とは、少し違う気持ちで臨むのではないかな、と思っています」
“色々なこと”の1つが厚底シューズへの対応だった。23年世界陸上で上位選手の多くが着用し、山西も帰国後に試してみた。だがパリ五輪選考レースの日本選手権(24年2月)までに対応できないと判断し、元のシューズに戻した。その過程で動きが崩れてしまったことが、初の失格をしてしまった理由だった。
山西は歩型が良い選手として知られ、レース中に注意や警告を出されたときも歩きを修正できた(※)。その自信があったこともあり、実業団入り後は代表入りを自身に課していた。実業団選手は競技で収入を得ているプロ、という矜持が山西にはあった。パリ五輪代表を逃し、一時的ではあったが引退も考えたという。
世界陸上に2回勝っている山西は、当時のシューズに「より適した」歩き方が身に付いていた。
「以前使っていたシューズはかかと側、靴の後ろ半分がすごく安定していました。競歩はかかとから接地して、つま先に抜けていくのでそのシューズが歩きやすかったのですが、カーボンの入った厚底シューズはかかとの安定感が少なく、前側半分の沈み込みと反発で進んで行きます。スウィートスポットに上手く体重を乗せて、その反力をもらっていく技術が必要になってきました。当初はそれができずに歩型も崩してしまいましたが、そこの技術にじっくりと取り組みながら、体の使い方とかトレーニングを探ってきました」
2月に世界記録を出したが、5~6月のポーランド・ワルシャワ(20km)、スペイン・マドリード(10km)、同ラコルーニャ(20km)の3レースでは、「目指しているところからすると、大会毎に技術にバラつきがあった」という。
「警告と注意を出された回数がまだ多くて、平均点が少し低い状態でした。練習の中でもっと精度を上げていかないといけません」
残り3か月でそうした懸念材料がありながら、山西に不安な様子は感じられなかった。「自分なりの工夫と、イタリアでの合宿などで他の選手がやっていることからアイデアを得ること。その両面からアプローチしていきます」
大きな部分で厚底シューズへの対応法はつかむことができた。あとは細かい個々の課題に対応していく段階だが、その過程に山西は自信がある。
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(※)競歩は審判が歩型を判定し、規程の歩型(両足が同時に地面から離れてはならない。また、踏み出した脚が地面についてから垂直になるまで、その脚は曲げてはならない)で歩いていない選手には注意がイエローパドルによって出される。注意されても直らない選手には警告が出る。3人の審判から警告が出るとペナルティーゾーンで待機を命じられる(20km競歩は2分、35km競歩は3分30秒)。ペナルティーゾーンを出てさらに1枚警告が出ると失格になる。注意や警告が出されると思い切った歩きができなくなるなど、勝負に影響することもある。
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