中国国内では、異例の事態が起きている。ゼロコロナの強い隔離政策で生活が圧迫された上海市民があからさまに“反習近平”“反共産党”を掲げ大規模なデモを繰り広げている。運動は北京にも飛び火し、天安門事件以来の騒動に発展しそうな勢いだ。
三期目に突入したばかりの習近平政権下の中国で何が起きているのか読み解いた。

■「“白紙革命”は言論の自由を押さえつけられたことへの不満」

中国の新型コロナ感染者数は1日、4万347人(28日)、死者は11月1か月でわずか6人だ。ちなに日本も28日は4万7809人。死者は141人だった。つまり中国は日本より患者も死者も少ない。が、中国では全国約2万か所でロックダウンが続いている。新疆ウイグル自治区での火災では10人の死者が出た原因は厳しいコロナ対策による消火活動の遅れだといわれ、河南省では世界最大のiPhone工場のロックダウンで従業員が生活苦に陥っている。上海の反コロナ政策のデモは「習近平、退陣」「共産党、退陣」が合言葉になっている。北京では「PCRはいらない、自由が欲しい」。デモ参加者は手に白い紙を掲げていることから“白紙革命”と呼ばれている。中国批判を書けば逮捕される今、何も書いていない白紙なら取り締まれまい、というメッセージだ。中国の外交と台湾問題を研究する福田円教授は言う。

法政大学 福田円 教授
「“白紙”は言えないけれど言いたいという思いの表れ。この白紙革命は2年前の香港でもあった。ウクライナ侵攻に反対するロシア国内でもやられていて、ある程度国際的な抗議の形になっています。(中略)この運動はSNSでの広がりも速く、なかなか収まらないかと…」

世界のコロナ対策が緩和される中、中国はなぜ頑なにゼロコロナにこだわるのだろうか?

笹川平和財団 小原凡司 上席研究員
「習近平氏が行いたいのは、共産主義への回帰であって、締め付けるということ。言論の自由もさらに統制される。白紙革命はそれに対する不満の表れ。そうした中で制度的には一強体制を作った習近平氏ですが、国民の支持はまだ得ていない。まだ抑え込みたいという中で、過ちを認めるわけにはいかない」

前例のない三期目に入り、自らの権力基盤を固めなければいけない時に自らの政策を改めることは弱体につながると考える習近平氏。しかし、今回の大規模なデモの広がりを見ていると2年前に香港の抗議活動を抑え込んだような剛腕が感じられない。

元駐中国大使 宮本雄二氏
「習近平さんが権力を掌握して7人の側近を全部自分の側の人間にした“個の力”と、共産党全体を自分の言う通りにして、国民を引っ張っていく力とは別の力だとアメリカの学者が言っていたが、もっともですね。常務委員会は牛耳ったが、中国社会全体はコントロールできないんです。今回の出来事は間違いなくその表れだと思います」

異例の三期目に入った習近平主席だが、国内で足元が揺らげば、レガシーを外に求めるかもしれない。それが台湾の統一に向けた動きの加速だ。