2025年8月30日、山梨県で日本最大規模のワインコンクールが開催され、最高峰に輝いたのは、伊豆市のワイナリーが出品した赤ワインでした。名誉ある受賞の舞台裏には猛暑や豪雨といった「異常な天候」への対応策がありました。

伊豆半島の中心に位置する「中伊豆ワイナリー」。30年ほど前からブドウの栽培を始め、現在、畑は10ヘクタールまで広がり、全国屈指のワイナリーに成長しました。

<LIVEしずおか 井手春希キャスター>
「このたびは受賞おめでとうございます」

<中伊豆ワイナリー 醸造家 水野直人さん>
「ありがとうございます」

<井手キャスター>
「自信はありましたか?」

<水野さん>
「自信はちょっとありました」

中伊豆ワイナリーの醸造家、水野直人さんは静岡県函南町出身。山梨県でワイン造りを学び、9年前から中伊豆ワイナリーで醸造に情熱を注いでいます。今回、「日本ワインコンクール」で最高賞にあたる「グランドゴールド賞」に輝いた赤ワインは、国内産ワインの発祥地・山梨県や長野県をおさえての快挙です。

<井手キャスター>
「ここ伊豆も日本のワインベルト(※ブドウ栽培に適した緯度帯)に入っていますがワイン造りには適しているということですか?」

<水野さん>
「適してはいません。温暖多湿で雨が多い地域ですので、伊豆でブドウを栽培するのはすごく難しい条件の中での栽培になります」

一般的にワイン造りは、年間平均気温が10~20℃で昼と夜の寒暖差があり、一年を通した雨の量も500~900ミリ程度の地域が適しているといわれています。中伊豆ワイナリーがある伊豆地域の年間降水量は約2800ミリ。「雨対策」には細心の注意を払っています。

<水野さん>
「やっぱりブドウに雨があたると病気の原因になったりするのでグレープガードというんですけども、雨除け…」

<井手キャスター>
「確かに完全に覆いかぶさっていますね」

<水野さん>
「ブドウに雨一滴さえつけない思いでやっています」

雨の多い日本でブドウの果実を守るために考案されたという「グレープガード」。

中伊豆ワイナリーでは梅雨入り前の5月中旬から準備を始め、作業の効率化を図りながらブドウの手入れをする時間を設けています。

<水野さん>
「例えば、このメルローですと、光を当てると色づきが良くなるので、このメルローをひっくり返して裏側に光を当てたりなど、細かい作業ができるようになったのでブドウの品質が良くなりました」

温暖化が進み、これまでのワイン産地が対策を迫られる一方、中伊豆ワイナリーのようにブドウの栽培方法や醸造技術の工夫によって世界中で新たな産地が生まれています。

受賞した赤ワインは3種類のブドウをブレンドしていますが、水野さんは醸造方法を見直していました。

<水野さん>
「昨年より伊豆らしさ『伊豆のテロワール』を表現するために、それまでは無ろ過でワインを出していたんですけども、ちょっと軽めのろ過をかけたりとか、それ以降、飲み口がやわらかくて伊豆らしいワインになったのかなと思っています」

テロワールとは「ワイン産地の個性」を意味します。

<井手キャスター>
「いただきます。香りがふわ~っと広がります。(味は)深みもあるんだけれどもマイルドでやさしいですね。親しみやすい味わいなのかなと思いました」

水野さんは中伊豆でワイン造りに関わるすべての人の思いを形にしました。

<水野さん>
「今、温暖化でブドウの色づきがこなかったりするのが問題になってきているんですけれども、伊豆はいち早くその問題に対応できているという強みがあるので『銘醸地』といわれる山梨とか、長野、北海道には負けないぞと言いたいですね」