「飲酒のため注意力散漫」は不自然で不合理
この裁判の争点は、赤信号無視の“故意性”。
続く論告求刑で、検察側は「車を運転していた池田被告は、信号機を遮るものがない見通しが良い直線道路で、事故現場の交差点が赤信号になって13秒表示してから進入したが、確認する時間は十分にあった。また、直前も蛇行や車線の逸脱もなく走行していて信号に従うことができる状態だった。事故前、酒気帯び運転ながらディスカウントストアに向かった際は信号表示に従っていた。事故30秒前にも交差点でタクシーと衝突しそうになったのにブレーキを踏んで回避している。さらに逆走したが、ハンドルを切って衝突を回避し車線に戻っている。衝突しそうになったタクシーの運転手も目を開いて運転していたという被告の表情の証言は信用できる。事故後も消防に救急を求める通報も呂律がまわっていなかったということはなく、ふらつくこともなかった。信号表示に従うことができる十分な状況にあった。赤信号を無視した過程でも時速54キロから時速68キロと加速しさらに事故現場の交差点には時速約70キロで侵入し加速を続けたことも信号に従うつもりはないものであったと言える。飲酒のため、注意力散漫になり、赤信号を見落としたという被告の供述は不自然、かつ不合理で到底、信用することはできない。被害者は19歳という若さで将来への希望を抱きながら命を奪われたことは筆舌に尽くし難い。経緯や動機を考えても極めて悪質であり反省もなく、刑事責任は極めて重い」と指摘した。そして、池田被告に懲役16年を求刑した。
一方、弁護側は「エアコンのスイッチを切ろうとダイヤルを操作したところ、視野が狭くなり、視界の上にある赤信号を見落としたもので、他の赤信号見落としを含め飲酒による影響から注意力が散漫になっていた。こうした状況から危険運転致死傷罪は成立しない」と主張した。