900万年前の札幌にいたサッポロクジラ。偶然、化石として発見されその存在が明らかになりました。化石の発見から17年、新種のセミクジラ科の一種だと判明しました。発見者と研究者がたどった軌跡です。
札幌市南区の小金湯。クジラの化石は、私たちに身近な豊平川で見つかりました。
・発見者の森和久さん
「最初に見つけたのはこの辺、ふと目につき『これなんだと?』と」
発見者の森和久さんは2008年の10月、紅葉を撮影しようと散歩していた時、足元の岩のようなものに目が止まりました。
普通の人なら通り過ぎてしまいそうですが、森さんはすぐに「骨だ」と確信したといいます。
・発見者の森和久さん
「(そろった形の)石が並んでいてそこに背骨が5個見えた。『これは動物の骨だ』と」
森さんが見分けることができたワケは。
・札幌医科大高度救命救急センター(2009年当時)森和久医師のインタビュー
「初動のときに、多数の傷病者に対して対応ができなかったので、実際にこういうものが出ていき役に立てるのではないか」
森さんは札幌医大の災害派遣医療チーム「DMAT」の初代隊員も務めた救急医。現在は、札幌市厚別区で病院の理事長をしています。
・新札幌豊和会病院 森和久理事長
「解剖の勉強があって骨のスケッチがありその時スケッチした記憶があり『これはろっ骨だ』と直感した」
森さんは化石を掘り出すと、すぐに札幌市博物館活動センターに持ち込みました。
・新札幌豊和会病院 森和久理事長
「自分が持ってきた骨を見せると『これ大変だね、本物だね』と」
発掘作業が始まると、土の中から、化石が続々と姿を現しました。
背骨や指、そして頭部…。
4年にわたる発掘で、全身の7割ほどの化石が掘り出され、17年にもわたる研究の結果、新種のセミクジラの一種だと判明しました。
名前は「メガベリーナ・サッポロエンシス」、和名は「サッポロクジラ」に決まり、先週発表されました。
・札幌市博物館活動センター 田中嘉寛学芸員
「これは耳で、ここに鼓膜が張られていた。かっこいいですね。これはサッポロクジラの頭、2メートル20センチある。頬から頬の長さが化石として残っているので全長12.7メートルという推測ができた」
そもそも、なぜ豊平川の河原に、クジラの化石が眠っていたのでしょう?
・札幌市博物館活動センター田中嘉寛学芸員
「札幌市は海がありません、今は。ですが900万年前、ここが石狩浜、ここは苫小牧。南北に海が入り込んでいた時代があります。当時の札幌は海の中」
サッポロクジラはただの化石ではなく進化の過程を解き明かす世界的に貴重な発見だといいます。
・札幌市博物館活動センター 田中嘉寛学芸員
「2000万年のセミクジラの仲間の歴史の中で、1600万年前から600万年前までの化石が(世界で)見つかっておりませんでした。札幌から見つかったセミクジラの化石は900万年前のものなのでちょうど、その空白の900万年間に1つの点を追加することができた」
散歩の途中に、化石を発見した森さんは。
・新札幌豊和会病院 森和久理事長
「見つけることができたのは『自分の最大の生きた業績』だと思う」
「サッポロクジラ」の化石の一部は12日金曜日から来年1月25日まで、北海道大学の総合博物館で展示されます。