パルチザンによるゲリラ活動はこれまでも報道されてきたが、その裏にもコマンドーネットワークの支援があったのだ。
そして「兵器の分析」。例えば3月、ロシア軍は電子戦兵器『クラスハ4』をキーウ周辺に放棄して撤退した。これを分析したところ、とんでもなく有益な戦利品だった。
英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)日本特別代表 秋元千明氏
「この中にどのくらいのソフトウエアが入っていたかというと、戦闘機10機と交換してもいいような情報が入っていた。一番重要なのは、電子妨害といって電波を妨害する機能がある。GPS,AWACSのレーダー、地上のレーダー、携帯電話、すべての電波を(半径300キロに渡って)妨害する能力を持ってる。」

電波を妨害するためには敵の電子機器の周波数を分析できないといけない。つまりこれを押さえたことでロシアの電子技術がどのくらいなのか把握できるという。同時にどんな妨害技術を使っているのかもわかる。結果として対抗措置がとれる。さらに、ロシアの暗号技術も掌握したという。最終的にはロシアのデータ通信のすべてに入り込むことも可能だ。
英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)日本特別代表 秋元千明氏
「太平洋戦争の時、アリューシャン列島でゼロ戦がアメリカに捕獲されたことがあります(これによって日本の航空技術がアメリカに流れた)けど、それと似たような事例です。何しろ『クラスハ4』はロシアにまだ10基しかない。どんなものかわからないけど警戒していた兵器・・・」
続いては「武器輸送計画」だ。
英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)日本特別代表 秋元千明氏
「武器の輸出は20か国ぐらいが既にやってるんですが、すべてドイツ・シュツットガルトにあるアメリカの在欧米軍司令部が全部管理してます。そこがマネージメントをして秘密の輸送計画を立てている。どういうルートかは知りませんけど、その中心にいるのがコマンドーネットワークです。鉄道ルートが多いと聞いてますけど・・・」
そしてもうひとつ重要なのが「作戦の立案」だ。具体例は数知れない。クリミア橋の爆破も、黒海艦隊の巡洋艦『モスクワ』撃沈もコマンドーネットワークによる立案といわれている。南部ヘルソン市と東部のハリキウ州やリマンの奪還も、“相互陽動作戦”として、コマンドーネットワークが立案した戦法だったというが驚いたのはこの作戦はすでに5月にたてられていたという。

■「ロシアの高級将校の居場所はウクライナに教えない」
情報を集めて分析し、前線に流し、武器を供与して作戦を立てる・・・。これはもう支援というより、ロシア対コマンドーネットワークの戦争、即ち、アメリカ、イギリスをはじめNATO諸国の戦争に他ならない。どこが直接対決の発火点となるのだろうか。
朝日新聞 論説委員 駒木明義氏
「ロシアはNATOを具体的な戦争に巻き込むことは慎重に避けようとしている。(中略)始まった当初、非常に短い期間に司令官クラスの将軍が10人亡くなった。これもロシア側の通信が漏れていた結果だといわれてます」
情報戦によっての攻撃は直接の発火点にはならないことは分かった。そして、アメリカは支援と直接介入に関しては明確に使い分けているという。
明海大学 小谷哲男 教授
「どこからアメリカが参戦したということになるのか…。インテリジェンスの部分では明確なガイドラインがあって・・。ロシアの高級将校の居場所はウクライナに教えない。部隊の居場所の情報は渡す。しかし個人の情報は渡さない。もう一つロシア領内の動きに関しての情報はウクライナに渡さない。この線引きで国際法上アメリカが参戦したことにならないと考えている」
いまのところどちらの陣営についても微妙な距離はとれているように思う。しかし、ロシアがこだわっているクリミアについて、ウクライナ軍とその裏にいるコマンドーネットワークの戦い方いかんで距離は微妙になるかもしれない。この点について、コマンドーネットワークが新たな作戦をすでに計画していると秋元氏は気になることを口にした。
英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)日本特別代表 秋元千明氏
「クリミアの奪還まで進むのかどうかと言うと、それが基本的にウクライナの希望ですし、西側に強く反対している国もなく、イギリスはそれを強く求めています。私が接している情報では、間違いなく…いや間違いなくと言うと言い過ぎですが、たぶんクリミア奪還に行く、そういう計画が策定されると思います」
(BS-TBS 『報道1930』 11月23日放送より)