まずは情報機関の連携だった。ロシアの情報機関の出先機関的存在だったウクライナの情報機関FSBは、政権が倒れた後もロシアに人脈を持つ職員が多くいた。欧米としてはロシア情報を引き出すために連携するメリットがあった。さらに欧米の軍の特殊部隊はウクライナ軍の西欧化教育に当たった。
英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)日本特別代表 秋元千明氏
「ウクライナをすぐにNATOに加盟させるのは不可能だと最初からわかっていた。なので軍事的に西側型の軍隊に変えようとした。戦術、戦略、情報戦などあらゆる西側の近代的手法を教え、軍備も与えて西側の軍事組織の一部に取り込みたかった。イギリス・アメリカ・カナダが中心になってやった・・・。将来のNATO加盟に道をつないだ」
■去年の7月にロシアのウクライナ侵攻の兆候があった
こうして生まれた情報機関と特殊部隊の連携。西側とウクライナの情報機関は、実は去年の7月にロシアの侵攻計画の端緒をつかんだという。注目したのはロシアの諜報機関FSB内のウクライナ担当局の人数。普段は20人程度の部局が200人に膨らんでいたのだという。そして、彼らがウクライナ内でロシアへの協力者を調査し、少なくとも年末にはウクライナ政権を転覆させた後の傀儡政権のメンバーまで決めていたのをつかんでいたという。そして入手した内部文書に書かれた計画とは…。

RUSI日本特別代表の秋元氏が関係者に聞いたところでは、1月18日にプーチン大統領が侵攻を承認、そして侵攻軍事作戦開始は2月20日となっていたという。そして作戦終了、ウクライナ全域掌握は3月6日となっていたという。
2週間ちょっとでウクライナ全土を占領できる皮算用だったようだ。だが現実は作戦開始予定日も4日遅れ。当然、作戦終了は今もしていない。計画は音を立てて崩れていた。
■「戦闘機10機と交換してもいいような情報が入っていた」
西側の情報と戦い方を伝授されていたウクライナ。その戦いによりロシアの計画は狂い、多くの兵士を失っていく中、今回の秘密組織「コマンドーネットワーク」は5月に生まれた。
これまで明かされなかったコマンドーネットワークの役割は大きく分けて4つだ。
「軍事情報の提供」「兵器の分析」「武器輸送計画」「作戦の立案」だ。

まずは、「軍事情報の提供」。
AWACSなどの哨戒機、無人偵察機、電子偵察機、偵察衛星などを使って収集したウクライナ国内でのロシアの情報がドイツにあるコマンドーネットワークの本拠地に集約される。これを精査した軍事情報がウクライナ国内の拠点などに送られ、そこから前線の将校が持つタブレットに送信されるシステムだ。

英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)日本特別代表 秋元千明氏
「ウクライナは同盟国ではないので、送る情報と送れない情報はフィルターをかけている。機密のガイドラインに沿って送れる情報を渡す。タブレットは下級将校まで持っている。(中略)正規軍だけでなくパルチザンも情報は共有してます」