他の蜂の巣の乗っ取り犯?

(大野竜徳さん)
「そんな見た目に美しい彼女たちには恐ろしい一面が…。なんとその正体は『他の蜂の巣の乗っ取り犯』なのです。

見た目は美しいブルービーですが、実はどちらも『労働寄生』という生き方をしています。

ルリモンハナバチはミツバチ科に属し、英語では Cuckoo bee、オオセイボウはセイボウ科に属し、英語では Cuckoo waspと呼ばれますね。

どちらも鳥のカッコウの名前を付けられているように、『托卵』という戦略をもち、他のハチの巣に自分の卵を産んであとは知らん顔です」

「ルリモンハナバチは寄生先として、泥で作った巣に花粉を集めて卵を産むコシブトハナバチやケブカハナバチの仲間の巣を狙います。

巣の主がせっせと花粉集めに出かけた留守を狙い、ルリモンハナバチは素早く巣に侵入して集めていた花粉に卵を産みつけます。

ルリモンハナバチはミツバチの仲間ですが、自分の体に花粉を付けて運ぶ器官は持たないので、自分では一切花粉を集めず、巣をつくることもなく、寄生先の巣の主がわが子のために用意した花粉団子だけでなく卵や幼虫まで自らの子の餌としていただき、幼虫は巣を乗っ取ってしまいます」

「いっぽう、オオセイボウは寄生先として『スズバチ』の巣を狙います(スズメバチ、ではありません)。スズバチは泥でできた鈴のような形の巣を作り、そこにシャクトリムシなどを狩って運び込み、卵を産みつけます。

オオセイボウはその巣壁に穴を開け、無理やり中に自分の卵を産卵して託してしまいます。生まれた幼虫はスズバチが集めた餌や卵や幼虫まで食べつくして成長します。

もちろん、寄生先のハチもただやられっぱなしではありません。やすやすと乗っ取られてはたまらないので、托卵されないようにさまざまな工夫をして生き残ってきました。

巣穴を曲げて侵入しにくくしたり、土を硬く固めたり、二重構造にして外敵を防いだり、さまざまな防御策を発達させたり、ブルービーとはちあわせた際には激しく攻撃して追い払うこともあり、恨めしそうにしつこくとどまるブルービーと戦ったりします」