戦車で鬼を蹴散らす桃太郎。サルは機関銃、キジは空爆

太平洋戦争の真っ只中、1942年に作られた紙芝居です。
「まあまあ、可愛や可愛や」「ばあさんばあさん、笑った笑った」

桃太郎の誕生を喜ぶ老夫婦。その愛情を受けてすくすくと育ち、鬼退治に出るところまでは私たちにもなじみのあるストーリーですが、一行が鬼が島に着くと、様相は一変します。

「進めーっ!」
戦車で鬼を蹴散らす桃太郎。

サルは機関銃、

キジは空爆で鬼退治です。

子どもたちの想像力を育むおとぎ話ですら、戦争で塗り固められていきました。

砲撃そして日本の敗色が濃厚となった1945年5月、その軍事教育ですら終わりを告げます。戦時教育令の公布により、日本の教育法規は事実上停止。学校の授業はほぼ行われなくなり、子どもたちも本土防衛などに備えることとされました。兵士はもちろん、多くの市民の命が失われるまで誰も止めることのできなかった戦争の歯車。人々の思想の礎となる教育を歪めたことこそが、その始まりだったのかもしれません。

(中田莞二さん)
「実際に岡山空襲を受けても、焼夷弾を落とされても、それでもまだ負けるとは誰も信じていなかった。教育というのは恐ろしいもんだと思います」