日米関税“15%上乗せ” 既成事実化の可能性も…
小川キャスター:
違いがもう既に出てきているという中で、中室さんは、日本のとった“あいまい戦略”についてはどうお考えですか。

中室牧子さん:
8月4日の衆院予算委員会で赤沢大臣は、今回の合意について国際約束なのかと問われて、「法的拘束力のある国際約束ではない」とおっしゃっているんですよね。これは文章にする、あるいは国会で審議をするとなると、どうしても時間がかかりますので、それよりは既に損害が出ている企業を救済するために、スピードを優先したということなんだろうと思います。
今から考えればその判断が正しかったのかという議論はあるかもしれませんが、結果論ということなのではないかと思います。もう一点重要なのは、その米国側が公表している官報の文章です。この文章を見ると、「15%を上限とする」という日本政府が日本に適用されるとしてきた関税の形態について合致しているものがあります。それは実は、欧州については適用されると書いてあるのですが、日本については言及されていません。
官報の中には付表が付いていて、そこでは日本について言及されているんですけれども、そこでは該当する品目について、「関税を15%上乗せ」というふうにはっきり書いてあるんですよね。
これは果たしてアメリカの事務的なミスなのか。あるいは日本政府の側に何らかの誤解があったのかは2、3日中に明らかになってくるだろうと思いますので、まずはそれをしっかり見極めるということが重要ではないかなと思いますね。
小川キャスター:
それだけアメリカ側の官報にはっきり書いてあるとなりますと、完全に既成事実化していく、事実であるかのように広がっていくということになってしまいますよね。
日米間でさらなる問題も…?“80兆円の投資” 認識の“ズレ”の恐れ
片山さん:
そうですね。今、ここをなんとかしようと赤沢大臣が現地で交渉・協議していると思うんですけれども…

また、トランプさんとの間にもう一つの問題が出てくるかなと思います。実は、日本側はプレゼントとして80兆円の投資をアメリカにするという約束をしています。
この件について、トランプさんは非常に喜んでいるのですが、実際に中身を見てみると、お金を出せるものは、あまり日本側は用意していないんですよ。
ただトランプさんは、80兆円手に入ると、契約金のように決まったもので、アメリカが好きに使えるお金だというふうに考えています。これが今後、火種になりそうです。

例えば、8月7日、赤沢大臣がSNSで投稿したAppleのCEOティムクックさんとの写真です。たまたま居合わせただけかもしれませんが、この日、Appleは14兆円の投資をアメリカにするというふうに発表しています。今後こういうお金の一部を日本側が投資してくれないか融資してくれないかって話になるかもしれないということです。
これが80兆円分、様々な議論がされるとなると、日本がどこまでやっていいのかは今後結構議論になるのではないかなと思います。
藤森キャスター:
これは、日本はどういうつもりなんでしょうか。
片山さん:
基本的には貸すつもりです。お金を直接出すことはそれほど多くはないと踏んでいるんですが、トランプさんはその気なので、どこまで日本はお金を出すのか、本当に日本のためになるのかという議論がこれから出てくるのではないかなと思います。
藤森キャスター:
ラトちゃんとか言ってる場合じゃない気もするんですけど…。
中室さん:
投資の中身は、わからないところもあるんですけれども、メリットがないわけではないと思います。企業がその事業の拠点を築く、そうした企業が米国内で地位を強化できるというようないいところはあると思うのですが、投資である以上、必ず利益が出るか否かはわかりません。また、国内経済にどの程度波及効果があるかという点も今後注目していかないといけないのではないかと思いますね。
小川キャスター:
政治への影響、石破政権にも影響していくことになります。
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<プロフィール>
片山薫 記者
元経済部筆頭デスク
財務省や経産省、農水省などを担当
中室牧子さん
教育経済学者
教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」