可処分時間よりも、ハックすべきは「可処分精神」

とはいえ、現代の子どもたちは忙しい。彼らの“可処分時間”はすでに塾や習い事、多様化する趣味、YouTubeやSNSなどに占拠されている。だからこそ、正頭さんは“可処分精神をハックする”という考え方を提示する。

「今の子どもたちは“いつの間にか考えてしまっている”ような、“心を掴むもの”でなければ学びに向かってくれない」

つまり、興味を学習に向ける、ではなく、心を惹きつけ、ワクワクしながら自然と考えてしまう“マインドハック設計”がなければ、現代の学びプロダクトは成立しない。

「学び」要素が含まれることで、エンタメはロングテール化する

エンタメ単体のビジネスは、コストとリスクを伴う不確実性の高いものが多い。だがそこに“教育的成果”という要素が加わると、長期的に使われる「ロングテール商品」になり得る。

「面白さだけでなく、“成果”でも評価される。ユーザーにとって明確な便益があるから、長く使ってもらえる」(伊藤さん)

これは単なる“ゲームが学べる風になっている”という話ではなく、楽しむエンタメコンテンツの先に、学習成果や社会的スキル、家庭内の会話の質など、定量的・定性的な成果が出る設計になったエデュテインメント商品である必要がある。

“つらくないと教育じゃない”という感覚が変わり始めた

知育アプリ開発をする中村さんは、エデュテインメントの可能性は社会や親の認識が変わることでさらに広がると見ている。

「何となく“ツラいものでないと勉強じゃない”という感覚は、減ってはきたけど、まだ完全にはなくなってない。でも、楽しく学んだほうが身につくという感覚は、経験的に多くの人が実感しているはず」

そうした“楽しい学びが当たり前”という感覚を社会に定着させるために、エンタメ企業の参入は重要だと強調する。

少子化が進む日本において、子ども向け市場は縮小すると見る向きもある。しかし中村さんはそこにもポテンシャルを見出す。

「子どもの数は確かに減っていくけど、家族で学びを楽しむとか、生涯学んでいくという時代に入ってきているので、そういった軸で見れば、まだまだ可能性は広がっていると思う」

教育とエンタメは、子どもにとっても、親にとっても、そして社会人にとっても、“学び直し”や“知的探究”の場として広がっていく。

求められているのは、教育の在り方を変えることではなく、学校や塾の範疇を越えた外側に、「コンテンツとして楽しみながら、いつのまにか学ぶ」という“新しい学びの領域”を生み出し、人が本来持っている「ワクワクして夢中になれる力」を、未来を生き抜く「学びのエンジン」に転換していくこと――。次の時代に向けた新しい「学び領域」が生まれようとしている。