津波は海の生物にとって「厳しい試練」一方「新たな命」にも…
(東洋産業 大野竜徳さん)
「まさに、津波の到達は海の中に突風が吹き抜けるようなもの。生き物たちにとっては、生きるか死ぬかの一大事です」
「津波は大きな自然災害、それでも、命は新たに紡がれます。しかし、このような“かく乱”は短期的には生物に厳しい試練を与えますが、同時に新たな命の芽吹きをもたらすこともあるのです」
「たとえば、津波によって撹乱された泥や砂の底質は、酸素が届きやすい状態へとリフレッシュされます
これにより、いつも酸欠だった場所(還元層など)に新たな生物が住むことができるようになるかもしれません」
「津波後の干潟では、アサリやカニなどの生物が新たに定着して、新しい群集を形成する例も報告されています。
また、海底から巻き上がった泥には豊富な栄養が含まれており、それが植物プランクトンの増殖を促進します」
「そしてこれを食べる小さな生物が増え…それを餌とする少し大きな生物が増え…さらにそれを餌とする魚などの大型生物が集まるといった形で、食物連鎖全体が活性化されます」
「過密だった生態系を再構築する機会にもなり、生物多様性を高めたり、新たな生態系をかたちづくったりする要因になるのです」
「小規模な津波や高波は、海の生き物にとっては“ゆらぎ”のひとつ。
時に試練となって牙をむき、時に再生のきっかけを与えてくれるぬくもりともなるのです。
「あるいは津波は命の『目覚まし時計』となることで、新たな命の居場所が生まれます。
いつもと違う波の動きを見かけたときには、ただ「怖い」と感じるだけでなく、その裏側で静かに進行する生き物たちのドラマにも、少しだけ思いを馳せてみてはいかがでしょうか」