若手作家への期待と「本」を支える人々

さて一番最近受賞した鈴木さんですが、私は受賞式に出席しました。鈴木さんが受賞のあいさつで、小説の執筆について「無限の可能性がある言葉を選び取り、一つ一つ置いていくと、殺りくマシンになったような気分になることもあります。あり得たかもしれない可能性すべてを肯定するような瞬間が訪れることを目指し、小説を書いています。ますます神に対して、祈ることに近づいています」と語ったのが大変印象的でした。

そして選考委員の川上未映子さんが、鈴木さんの作品について「現代における文学、言葉のあり方そのものを批評する見事な構造を持っています。何より心に残るのは、作品の持つ不思議な明るさ。私はこの作品を読むことで新しい希望に出会えたような気持ちでいます」と絶賛したのですね。まだ20代。今後に期待して注目していきたいと思っています。

ここまで西南学院出身の作家さんについて述べてきましたが、福岡には高樹のぶ子さん、村田喜代子さん、町田その子さんといった素晴らしい作家がたくさんいます。最近では対岸の山口県下関市在住ですが、北川透さんが「プリズン ブレイク 脱獄」という最新の詩集を出し、その本の装丁を村田喜代子さんの作品をはじめ多くの装丁を手掛ける福岡市在住の毛利一枝さんが担当し、本の中には毛利さん撮影の写真がちりばめられています。

西日本新聞で村田喜代子さんのエッセイに毛利さんの写真がコラボしているのですが、本当に才能のある方で、本というのは作家だけでなく、様々な人の力でできているものだと改めて気づかされます。毛利さんは私もよく知っているのですが、この方は筑紫女学院出身で西南学院ではないのですけれども、新著が出ましたのでご紹介しました。

ちょっと脱線しましたが、世の中にたくさんの本があふれる中、この番組のリスナーは福岡を中心とした人が多いと思われますので、今日紹介した西南学院卒というくくりで本を手に取ってみるのも面白いのではないでしょうか。ということで、今日は私が勝手に名付けた「西南文学」についてお話ししてみました。

◎山本修司

1962年大分県別府市出身。86年に毎日新聞入社。東京本社社会部長・西部本社編集局長を経て、19年にはオリンピック・パラリンピック室長に就任。22年から西部本社代表、24年から毎日新聞出版・代表取締役社長。