■「歩いていただけなのに死ぬ国なんてどこにあるの」息子の靴見つけ泣き叫ぶ母

亡くなった35歳の男性の母親と姉は、遺失物センターで男性の靴を探していた。
母親は「なんてことなの」「歩いていただけで死ぬ国なんてどこにあるのか」と叫び続けた。

亡くなった35歳男性の母親
「息子とソウルで一緒に暮らしていました。あの日、友達と出かけて行方不明になりました。私は午前0時ごろにタクシーで梨泰院に駆け付けるも、情報が錯そうし、息子の遺体の安置場所にたどりついたのは翌日の午後でした。しかも郊外の病院に安置されていました。ようやく葬儀が終わり、息子の靴だけがないことに気づきました。息子がいつも履いていたお気に入りの白いスニーカー。息子のものと一目でわかりました」

亡くなった35歳男性の姉
「あの日弟が着ていたシャツには、後ろの背中のほうに嘔吐物がついていました。弟の後ろにいた人たちのものでしょう。当時どんな状況だったか。想像するだけで恐ろしいです」

■「天国で再会したら、おいしいご飯を作ってあげるからね」29歳の娘へ…家族の手紙

事故現場の献花場には連日訪れる人があとをたたない。
献花場から少し離れた、事故現場の坂道の脇にある店舗の前に、花束を置いて佇む3人がいた。デザイナーの仕事をしている29歳の娘を亡くした家族だった。

ーーなぜ、ここに献花されたのですか?

29歳の娘を亡くした父親
「娘の遺体が、この場所で見つかったからです。娘はデザイナーの仕事をしていました。リーダーシップがあって明るい人柄だった。あってはならない事故だ」

父親は言葉少なに語り、女性の兄は、泣き崩れる母親の背中をさすっていた。
献花とともに家族が送った手紙には、こう書かれていた。

「愛する娘へ

家族みんなであなたに会いに来たよ。
天国では、痛いところなく、いつも笑いながら幸せに暮らしてほしい。
家族みんなで天国で再会したら、パパがおいしいご飯を作ってあげるからね。
いつまでも忘れないよ。愛している。
 
パパ、ママ、兄ちゃんより」

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後編に続く→「1人でも多くの命を助けたかった」158人死亡の群集事故、現場で聞いた「声」の数々
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