母親の胎内で被爆し重い障害を負った原爆小頭症の被爆者たちと、その存在を支えてきたジャーナリストの生涯をまとめた本が出版されました。

出版されたのは、『広島のともしび』原爆小頭症「きのこ会」と記者・秋信利彦です。著者は、元RCCの記者で長年、原爆小頭症の取材を続け、現在は当事者と家族の会「きのこ会」の事務局長を務める平尾直政さんです。
原爆小頭症は、妊娠早期の胎児が強力な原爆の放射線を浴び、脳や体に障がいを負って生まれるものです。この本には、1965年に原爆小頭症の当事者らが結成した「きのこ会」が、国に援護を求め、偏見や差別など社会の無理解と闘ってきた歴史が、当事者の証言や資料をもとに記されています。

また、きのこ会の結成に尽力し、支え続けたジャーナリスト、RCCの故・秋信利彦記者についても書かれています。秋信記者は、会の家族の求めに応じ、メディアなどの取材攻勢から守る「盾」の役割を果たす一方、自身は原爆小頭症について伝えることを封印しました。報道記者が伝えず、支援に専念したのはなぜか…。秋信記者の苦悩に触れながら、原爆報道のあり方について問いかけています。被爆から80年原爆小頭症の被爆者たちは79歳になりました。きのこ会の親たちは全員が亡くなっています。
きのこ会 平尾直政 事務局長
「今まとめておかないと、人の記憶から消えてしまう。その思いでこの本を書きました。核兵器によってこのような苦しい状況におかれて人たちがいることを1人でも多くの人に知っていただきたい」
「広島のともしび」は全国の書店やインターネットで販売されています。