かつて、「中国でありながら中国でない」ことが魅力だった香港。しかし今、香港は「中国の香港」という新たな道を歩もうとしている。民主化デモから6年。香港で何が起きているのか?現場を取材した。

息ができない...催涙ガスが立ち込める街でカメラを回し続けた

2019年6月。私は拡大しつつあった民主化デモを取材するため、香港に降り立った。

空港からすぐさま、香港島へ向かう。通りという通りが、「香港の自由」を訴えるデモ隊で埋め尽くされていた。デモ隊と対峙するのは、武装した香港警察。私が見たのは、スマートな国際金融都市というイメージからかけ離れた、「混乱の香港」だった。

デモ隊で埋め尽くされる香港島中心部 2019年6月12日撮影

突然、数百メートル先からデモ隊が必死の形相で私のほうに向かって走ってきた。「何が起きてるんだ?」思わずデモ隊と一緒に走り出す。すると、あたり一面が真っ白になった。

「催涙弾だ!」

香港警察が投げ込んだ催涙弾から白い煙が立ち込める。目、鼻、喉すべての粘膜が焼けるように熱くなり、私は激しくせき込んだ。息ができない。苦しい。目を開けていられない。それでも、私はカメラを回し続けた。

香港警察が投げ込んだ催涙弾から白い煙が立ち込める 2019年6月12日撮影

煙から逃れようとショッピングモールに駆け込むと、デモ隊のひとりが「これで洗うように」と水を手渡してくれた。顔にバシャバシャと水をかけ、催涙ガスを洗い流す。ようやく呼吸が落ち着いた。

これが、私の香港との出会いだった。

ショッピングモールは同じく顔を洗う人で埋め尽くされていた 2019年6月12日撮影