“書類のない移民”一斉摘発と異例の州兵派遣

こうしたなか、不法移民の一斉摘発に反発した抗議デモが広がったわけですが、これに対しトランプ氏が州兵を動員したことが、さらなる反発を招いています。

州兵は本来、州知事の指揮下にあり、緊急事態のみ大統領に指揮権が移されます。しかし今回トランプ氏は、“反乱の一種”だとして派遣を強行。これは実に60年ぶりとなる異例の対応です。

ただ、60年前の1965年は、州兵派遣の目的が真逆でした。黒人差別の根強かった南部アラバマ州で、公民権運動のリーダー・キング牧師が呼びかけたデモ行進があったのですが、州知事の指令を受けた警官隊などがデモ隊に暴行。このため、当時のジョンソン大統領が、デモ行進を護衛させるために州兵を派遣したのです。

今回、トランプ氏が州兵を動員したことについて、カリフォルニア州のニューサム知事は「トランプ氏が干渉してくるまで問題はなかった。見世物が欲しくて事態を意図的にあおっている」と批判しています。

トランプ氏の思惑は? なぜここまでカリフォルニアを目の敵に?

では、トランプ氏にはどのような思惑があるのでしょうか。

ニューサム知事は次の大統領選で民主党の最有力候補の一人で、ニューヨークタイムズは「トランプ氏は民主党の最大基盤のカリフォルニア州でニューサム知事との対決を望んでいた」と指摘しています。

政治利用される移民問題。アメリカ社会の分断は、より一層深まりそうです。