温暖化など深刻な気候変動が私たちの暮らしを脅かしていますが、環境破壊を「最も進行させる」とも言われる、『ある問題』があります。
■戦争後のウクライナは?映画が 描く世界が現実に?
2019年に公開されたウクライナ映画「アトランティス」。「ロシアとの戦争が終わって1年後、2025年のウクライナ」という設定の近未来が描かれています。
映画「アトランティス」より
「戦争のせいでこの一帯は居住に適さない状態になった。廃水で満ちた鉱山や破壊された工場が地下水を汚染した。絶望的だわ」
水源が汚染され、埋められた地雷撤去に20年はかかるという深刻な環境汚染によって荒廃したウクライナ…。
「戦争は最大の環境汚染」と言われますが、いま、こうした映画での描写が、現実のものとなりつつあります。
■インフラ破壊で断水・・・忍び寄る環境汚染
10月31日、首都キーウで激しい爆発と共に立ち上る黒煙。ロシア軍がウクライナ全土でインフラ施設を標的としたミサイル攻撃を行い、大規模な断水が発生。
石油やガス関連施設、工場などが攻撃され、有害物質の放出による大気や水の汚染への懸念が高まっています。
またマリウポリでは、下水が飲料水に混入して衛生状態が悪化。コレラの流行が懸念されています。
マリウポリ・ボイチェンコ市長「マリウポリは中世の環境以下の生活が続いています」
■戦争による国内の環境被害の実態 イルカの大量死も
10月、ウクライナ政府は、ロシアの軍事侵攻による国内の環境被害を発表。そこでこんな数字が出されました。
戦車や戦闘機は大量の燃料を消費し、気候変動の一因となるCO2を排出します。
今回のウクライナ侵攻では、開始から7か月間で3100万トンのCO2が大気中に排出され、これは、ロイター通信によると、ニュージーランド1国が1年間に排出する量に匹敵するといいます。
また生態系への影響も深刻です。侵攻開始以降、黒海ではおよそ5000頭のイルカの死骸が打ち上げられています。これは、軍艦が偵察などに使う音波が原因と見られています。
さらに今後、放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」が使用される可能性も懸念されています。