熊本のものづくりや最新の研究開発をとりあげる「クマモトメイド」!

今回は、老舗のミシン針工場が、今、世界中で話題の”アニマルウェルフェア”に挑む!

海外からも注目を集める「唯一無二の針」とは!

熊本県玉東町の国道沿いにある「九州オルガン針」は1971年に創業し、ミシン針を専門に製造してきた老舗の町工場です。

国内外にグループ会社を展開していて、世界トップクラスのシェアを誇ります。

九州オルガン針 早野 守 生産本部長「家庭用・工業用含めて、ミシン針一筋」

理想のミシン針を作るため、なんと、その、針を作る機械までも自社で開発!

2018年には、早野さんの指揮のもと「極細 多面研磨機」を完成させ、針の角度や鋭さをマイクロメートル単位で加工可能にしました。

半世紀にわたって進化を続け、磨き上げてきた、確かな技術力

その結晶の1つが、この、エヌエス針です。

九州オルガン針 早野 守 生産本部長「NS針は、よりシャープな先端に加工している。加工する上でも難易度が高い、オルガン針独自の針」

その鋭い先端が、縫う時の生地のダメージを最小限に抑え、繊細な縫製が可能に

エヌエス針を利用しているのが、山鹿市の縫製工場、ラ・モードです。

世界で活躍する日本のファッションブランドの縫製を数多く手掛けていて、その技術力は、国際的にも高い評価を受けています。

こちらの服、実は、すべてエヌエス針で縫製されたもの

ラ・モード 小原秀昭 主任「ミシンや人の技術でできない事をNS針で補っている。なくてはならない針」

服飾業界で確かな地位を築いてきた、九州オルガン針。その技術が、いま、全く異なる分野に挑戦しています。それは、医療です。

医学研究に欠かせない、マウスを使った動物実験。しかし近年、苦痛やストレスの軽減など「飼育されている動物のための福祉」いわゆる「アニマルウェルフェア」が、世界的な課題となっています。

この課題に取り組んでいるのが、ガンの研究者である、熊本大学、岡田誠治(おかだせいじ) 教授。九州オルガン針とタッグを組み、全く新しい医療器具を開発しました。

熊本大学 岡田誠治 教授「これが、九州オルガン針と共同開発したEz-plantです」

これまでのマウスへの組織移植実験では、皮膚の切開が必要なため、どうしても、傷や苦痛が課題でした。

しかし、イージープラントなら、注射一本で移植が可能!マウスに与える傷や苦痛を大きく減らすことで、アニマルウェルフェアの向上につながります。

さらに、移植手術の難易度も下がるため、医学の進歩にも貢献できます。

熊本大学 岡田誠治 教授「薬の開発がはやくなったり、医薬品開発の裾野が広がることになる」

これを可能にしたのが、この特別な移植用注射針!

マウスの皮膚は非常に特殊で、移植用注射針の製造は長らく困難とされてきました。しかし、九州オルガン針が培ってきた技術によって、唯一無二の針が誕生したのです。

去年12月には特許を取得し、今、世界を視野に、本格的に動き始めています。

熊本大学 岡田誠治 教授「ヨーロッパはやはり実験動物の福祉が進んでいますので、彼らからはかなり注目を集めている」

さらに先月、九州オルガン針は新たな挑戦をスタート!

今度は、畜産分野で県外の大学と連携。「針」を通して、また異なる角度から、アニマルウェルフェアへの貢献を目指します。

九州オルガン針 早野 守 生産本部長「縫うだけじゃなくて、編むだけじゃなくて、いろんな新たな分野や市場に挑戦していく。一本の針に心をこめて、針一筋に。これは大げさなんですけど、世界を驚かせる物を形にできればと思っています。」