中国はレアアース7種を輸出規制
これより先の4月、中国政府はアメリカとの対立激化を受けて、レアアース7種の輸出規制に踏み切りました。7種類とは、テルビウム、ジスプロシウム、サマリウム、ガドリニウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムです。
これらは電気自動車(EV)が搭載する高性能磁石などに使用される他、風力発電やスマートフォンなどにも不可欠なものだそうです。レアアースは中国に遍在するものが多い上に、精錬、加工の技術や場所で中国が優位にあることから、現在レアアースの7割が中国産です。いわばハイテク製品のチョークポイント(戦略箇所)を中国に抑えられた格好になっているのです。現に5月末にフォードのシカゴ工場でSUV車エクスプローラーの生産がレアアースを使った部品の不足から、一時停止に追い込まれる事態になりました。
トランプ政権には、ジュネーブの閣僚交渉で輸出規制解除を約束したのにレアアースが依然滞っているとの不満が募っていたのです。閣僚レベルでは規制措置停止と言いながら、実際の輸出許可は品目や地方ごとの審査が複雑で、意図的に許可を遅らせているという不満でした。
米だけでなく欧州、日本でも生産停止などの影響
中国の輸出規制の影響はアメリカだけに留まりません。どうやら欧州や日本に対しても輸出許可が遅れる事態になっているようです。欧州自動車部品工業会は、4日、中国政府による輸出規制で部品メーカーの工場が操業停止に追い込まれたことを明らかにしました。工業会によれば、会員企業からの申請の25%しか輸出が許可されていないと言います。
また日本国内でもレアアースを使う部品の調達が滞っていることから、スズキの人気小型車スイフトの生産ラインが停止したと報じられています。スイフトには簡易型ハイブリッドを搭載した車があり、ハイブリッドシステムにもレアアースが不可欠だからです。
中国が対立の本丸であるアメリカだけでなく、欧州や日本をも、事実上ターゲットにするのはなぜなのか。輸出許可審査と言う複雑な仕組みと通じた、いわば「さじ加減」によって米欧、日米の間にくさびを打ち込もうと揺さぶりをかけていると指摘する専門家もいます。米中対立の中でこちらに来れば、輸出を認めますよ、という中国側のサインだと言うのです。