電気自動車(EV)などハイテク製品に欠かせない希少鉱物のレアアース(希土類)をめぐる米中の攻防が激しくなっています。供給が中国に偏っていることから、中国政府が輸出規制を強化し、アメリカだけでなく、日本やヨーロッパにも揺さぶりをかけているからです。すでに各国では、自動車や自動車部品の生産にも影響が出始めています。
米中首脳電話会談でも中心議題に

アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席は、5日、再び悪化の兆しが見えていた米中関係をめぐって電話首脳会談を1時間半にわたって行いました。会談後、トランプ大統領は、「とても良い会談だった」とした上で、レアアースなどこれまでの合意を改めて整理したことを明らかにしました。またアメリカが課している関税をめぐる協議も継続していくことで一致しました。第2期トランプ政権が誕生して以来、アメリカ政府が米中首脳の電話会談の内容を公式に説明するのは初めてのことで、対立を沈静化させたいとの思惑がうかがえます。
5月の米中合意の決め手はレアアース
米中両国は5月にジュネーブで行われた閣僚級協議で、互いに追加関税を一気に115%引き下げると共に、関税をめぐる協議を継続することで合意していました。第2期トランプ政権発足後、様々な名目でアメリカは対中国関税を145%に、その報復措置として中国は対米関税を125%にまで引き上げ、ベッセント財務長官が「事実上の禁輸措置だ」と嘆くほどの事態に陥りました。
アメリカ国内では高関税が課せられた中国製品の在庫がなくなり、大衆向けの量販チェーンの店頭では、おもちゃやサンダルの商品が少なくなり、いよいよ高関税での輸入による大幅値上げを余儀なくされる寸前まで至っていました。そうしたタイミングで行われたジュネーブでの閣僚協議が合意に至った決め手は、中国側が4月に決めたレアアースの輸出規制を緩和することを約束したためだとされています。合意文書には「中国の貿易制限措置を停止または解除」と書かれています。