シリーズ「現場から、」です。大規模災害のたびに廃業を余儀なくされる畜産農家がいます。そうした事態を減らそうと、栃木県の高校生が地域の家畜動物の命を守る取り組みに挑戦しています。
暴れまわる牛がいれば、なかなか前に進まない牛も。
先月、栃木県の県立高校で行われたのは「牛の避難訓練」。大規模な地震により断水などが長期化したことを想定し、近くの畜産農家などから校内の放牧場へ牛を避難させるというものです。
避難先の放牧場は土砂災害のおそれのあるエリアの外にあり、近くには飲み水にもなる沢水などがあるため、一定期間、牛が無事に過ごせることが期待できます。
訓練を計画したのは、高校で畜産を学ぶ生徒たち。きっかけは、ある問題意識です。
高校3年生 平野初妃さん
「大きい災害とかで、今まで頑張って作り上げてきたのに、一気になくなってしまう」
実は、畜産農家は大きな自然災害のたびに廃業の危機に追い込まれています。停電や断水、道路の寸断によりエサの確保などが難しくなるほか、農家自身が避難を迫られ、飼育現場から離れざるを得ないケースもあります。去年の能登半島地震では、能登地方にあった5つの畜産農家が廃業。そんなケースを減らそうと、避難訓練を計画しました。
今回の訓練では、学校から6キロほど離れた農家の牛も実際に避難させました。牛を運ぶ運搬車は1台のみ。飼育しているすべての牛を避難させることはできません。
畜産農家 佐々木光子さん
「やっぱり置いていくというのは悲しいかなと思いますね。一番大事な牛を最初に避難させる。系統が良い牛とか、出産間近の牛とか」
牛舎の前にかけられたボードには、避難させる牛の優先順位が。これに基づいて2頭の牛が選ばれ、学校へと運ばれました。
農家の牛が到着したところで、2時間に及んだ避難訓練が終了しました。
高校3年生 平野初妃さん
「いざそういうときになると、牛まで手が回らなかったりしそうだから、たくさんこういう経験を積んで本番に備えたい」
生徒たちを指導している嵯峨俊介教諭は、「生徒や農家が自分の命を守ることが一番」としたうえで…。
栃木県立矢板高校 嵯峨俊介 教諭
「災害があれば廃業するリスクは必ずはらんでいるものなので、1頭でも2頭でも助かる命があれば『牧場を再開できる』という希望にはなる」
災害から地域の畜産を守ることを目指して、より良い避難のあり方の模索が続きます。
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