「憎い犯人に極刑を」 内部文書から見える“仮釈放”の高い壁

健康な高齢者は工場で作業をする。
――いくつですか?
「88歳」
――犯罪は何ですか?
無期懲役・服役26年
「殺人」
――無期懲役で亡くなっていく人が多いでしょう。何回か見ましたか
無期懲役・服役26年
「はい」
木工場で働く22人のうち無期懲役囚は14人。
家族と過ごした時間よりも服役した年月がはるかに長い。同じ境遇同士の安堵感さえ漂う。
死刑を免れた男達は、この独房で少なくとも30数年を過ごさなければない。
長い刑期は“獄死”と隣合わせだ。

60代・強盗殺人・無期懲役・服役21年
「来たら(厳罰化)で15年も過ぎ、20年も過ぎた。30年でもどうかなと。いつ病舎に行くかも分からない。一生ここでという覚悟は決めている」
40代・殺人・強盗殺人・無期懲役・服役10年
「殺人3件で起訴された。自分も無期になる前は死刑だと思って過ごした。自身のことも含めて、長期刑の人が獄死するのは因果応報に尽きるかなと思う」
事件は加害者の家族も“被害者”にしてしまう。

60代・強盗殺人・無期懲役・服役15年
「2クラスしかない学校なので事件はすぐ噂になる。娘や息子が学校で虐められた」
私達は死刑を免れた男達の仮釈放に厳しく臨む法務・検察の内部文書を入手した。

無期懲役囚Aの仮釈放の申請を却下した検察当局の内部文書だ。
現職の警察官だったAは47年前、交番で勤務中、制服姿で女子大生の部屋に押し入り“強姦致死事件”を起こした。
死刑を求刑された場合、“マル特無期”と呼ばれ仮釈放は困難だ。
検察当局の内部文書
「被害者は就職も決まっており婚約者もいた。何の落ち度もないのに、非業の死を余儀なくされた。失神しては息を吹き返した被害者の頸部を繰り返し絞め付けて殺害するなどした」
検察官は厳しく断罪、随所に“極刑”、つまり死刑の文字がある。
検察当局の内部文書
「作業中も休み時間も運動時間でも、お詫びの気持ちを持ち続けていると反省の弁を述べているが、既に他界した被害者の両親は生前ずっと“憎い犯人に極刑を”と訴えていた」

仮釈放に関しては検察当局が遺族と連絡を取り、被害者感情を重視して厳しく臨んでいる事がうかがえる。死刑を望む遺族の意向が無期懲役囚の終身刑化に強く影響しているのだ。