常態化する“獄死” 無期懲役囚たちの最期
霊安室からわずか10メートルの距離に病棟がある。部屋は4人のうち3人が無期懲役囚だ。
――罪は何ですか?
「わからない」
刑務官
「なんで刑務所に入ってきたのって」
80代後半・殺人・無期懲役・服役30年
「殺人」
――被害者は何人ですか?

80代後半・殺人・無期懲役・服役30年
「3人」
――刑務所からでたら何をやりたいですか?
80代後半・殺人・無期懲役・服役30年
「釣り」
脳の疾患で自傷行為が激しいために、ミトンを付けている無期懲役囚もいる。

病棟はあたかも介護施設のようだ。

看護師
「最初来たときは怖かったです。どういう人達か分からなかったので、怖かったです」
――殺人で無期懲役の人がいるというのは?
看護師
「はい、わかっています」
――受刑者という感じはないですか?
看護師
「普通の患者さんと同じように接しています」
ほとんど知られていないが、塀の中でも一般社会の病院に劣らない医療設備が整っていた。
宮城刑務所は東北地方の医療重点施設に指定されている。
医師7人、看護師20人が24時間交代で待機する。

刑務官
「もうちょっとで…という人達です」
――今、いくつですか?
80代後半・殺人・無期懲役
「今30…31かな」
――無期懲役ですか?
80代後半・殺人・無期懲役
「はい」
――事件は何ですか?
「…」
この無期懲役囚は犯した罪の記憶を消し去るかのように、翌月死亡した。
末期癌の別の受刑者も2週間後息を引き取った。
“獄死”が“常態化”している。
新妻医務部長は東北大学から派遣されて30年。多くの“獄死”に立ち会ってきた。

新妻宏文 医務部長
「特に無期懲役の方は、亡くなられた後にご家族がいないことがほとんどです。知っている医療従事者のもとで亡くなり、葬儀のときには教誨師の先生や所長、幹部が列席します。(獄死の方が)社会で亡くなるよりも孤独感は感じないかなと思う」














