3日に東京ドームで行われる「高校野球女子選抜」と「イチロー選抜KOBE CHIBEN」の試合に「9番・投手」で出場するイチローさん(49)が、独占インタビューで心境を語った。イチローさん率いる「イチロー選抜KOBE CHIBEN」が「高校野球女子選抜」と対戦するのは2年連続2回目。今回は松坂大輔さん(42)がチームに加わり「4番・遊撃」で出場する。
去年は足や指をつりながらも満身創痍で147球の熱投。完封勝利を収め、試合後には「限界を感じた」と涙を流したイチローさん。2度目の“真剣勝負”への思いとは。

記者:
今年も女子の高校野球の選手たちと向き合うというところで、その思い、モチベーション、っていうのはありますか。去年1度やってみて、変わらない部分、変わった部分の思いは?

イチローさん:
思いは強くなってると思います。女子の野球選手たちは野球が好きですよ。男子、これ比較しちゃいけないのかもしれないけど、やっぱ男、男子に負けられないっていうか気持ちとしてね。だから男子と同じ舞台でやりたいって思ってる子がほとんど皆、そうだと思うんですよ。去年から甲子園で決勝戦という機会が始まったじゃないですか。女子の野球熱ってすごく高まってると思うんですよね。その光が当たる舞台があったら、もっともっと盛り上がるんじゃないかっていう思いを去年、ゲームをして強く感じました。

記者:
逆転してもされても楽しそうに野球やりますよね、彼女たちね。

イチローさん:
本来、野球と向き合う、好きなことと向き合う姿がそこにあると思うんですよね。男子には無い魅力がありますね。

記者:
去年(12月に開催)の高校野球女子選抜との試合というのがもう本当に寒くて、足もつり、最後は指もつり、もう本当にあれだけの色んなことを抱えながら、それでも投げ続けて最後に涙まで流したというね、あの思いを今、改めて振り返るとどうしてそこまでやったのかなという風に思いますか。

イチローさん:
だって全国から集まってきてくれてますからね。僕がそこにいなかったら、それこそ彼女たちのモチベーションは大きく下がると思うんですよ。もちろん良い球場でやってるし、それだけでっていうこともあるかもしれないですけど、そこに僕がいるかどうかは大きな彼女たちのモチベーションになるはずなので、なるべく直接対戦をしたい。
僕はピッチャーでは本来ないですけど、ないけど、でもおそらく女子の中で僕が投げたら僕くらい投げる人はあんまりいないと思うんですよね。そういう機会があることで彼女たちのレベルが上がるかもしれないっていう期待もそこにあった。9イニングにしたのも、7イニングでは当然プレーできない選手も出てきてしまうので、まぁなかなか12月の気温5度はしんどかったですけど。でも僕が現役のプロ野球選手であったらそんなことはもちろんできないんですけど、僕自身のアスリートとしての限界を見極めるためにもすごく大事な1日で、まぁそれで今、僕は苦しんでるんですけど。ほんとちょっと焦りだしてて今。

記者:
やっぱり今年もその「投手・イチロー」っていうところは大事に考えてる?

イチローさん:
まぁ「背番号1番」ですからね。当然そうです。

記者:
選手たちは「甲子園」とそれから「WBC」がいっぺんにできたみたいな気分、ですって。

イチローさん:
おーー!

記者:
イチローさんとジャパンでやれれば、なんか今まで何もなかったのにいきなり2つの目標ができたみたいになるって。何かその後の手紙なりリアクションなり、何か女子の選手が、こんな風に感じてくれたんだ、みたいなことを感じさせられたことってありましたか?

イチローさん:
えっとね、直接の手紙は無いので高校野球の選手たちとはそこは違います。でも運営されてる方々から間接的には聞いてます。

記者:
こういうことを与える、みたいな関係に見えますけど、逆にイチローさんも彼女たちから得たものみたいなものって、やはりいっぱいあったってことですか?あの試合で。

イチローさん:
だって僕があそこまで、極限まで、その時の自分の極限までいってみようって覚悟したのは、彼女たちの存在があったからですよ。あのゲームなかったらそんなこと僕してないですもん。で、それを目標に今も毎日鍛えてる。その先には、鍛えてる先にはあのゲームが常に僕の中にあるので、その存在がなかったら、アスリートとしての僕の限界を、まぁ口では言ってんだけど本当に限界みることないかもしれないですよね。

記者:
やっぱりその涙の理由っていうのはその辺と重なるわけですか?

イチローさん:
うん実際に、「限界なんだ」って今まで感じたことないですから。涙したことはありますよ。それは限界を見てじゃないんで、感極まってとかそういうことですからそういう涙なんで。

記者:
ちょっとこう言葉で言うと薄っぺらくなっちゃうかもしれないですけど、その限界を見たっていうね、その限界を見るとその限界のもう一個先にまた限界ができたりするもんなんですか?

イチローさん:
それは現段階では分からないですけど、あの状況であの環境っていうんですかね、僕は限界でした。ただそれが限界とわかって実感として肌感覚で分かったので、じゃあ次、目指すところはその先だっていうのは当然ありますよね。じゃあどうしたらいいのかは分からないんですけどイメージとしてはその先があります。

記者:
では今年の試合でそれが見られるかもしれないっていう楽しみはある?

イチローさん:
ただ同じ条件ではないので今回は東京ドームですから。前回は12月の神戸ですからね。同じ条件ではないんですけど、少なくともあの状態に持っていきたい。147球投げても、まぁ148球目もいける状態にしておきたいという思いはあります。