日本から薬がなくなる日も…
アメリカに比べ日本の薬価は安い上に年々下がっていく。一見消費者にはいいように聞こえるが、いわば“元が取れない”そんな市場に製薬会社が入って来ないケースはすでにたくさん起きているという。
例えば日本では値がどれくらい下がるのか…免疫に作用して癌の治療薬として有名な薬オプジーボは、京都大学の本庶佑特別教授が開発に携わりノーベル賞を受賞したことで有名だ。この薬は2014年には100ミリグラム72万円だったが日本では10年後に13万円に値下がりしている。しかしアメリカでは10年後も49万円だ。

こうした日本の安さに松本教授は危機感を覚えているという。

国際医療福祉大学 松本哲哉 主任教授
「日本に将来、薬が入って来なくなる可能性があるという状態でなく、すでに日本はドラッグロスの状態。日本で治験やって承認まで持って行って売ったところで利益を得られないのであればわざわざ入って来ない海外の製薬会社はたくさんある」
日本には現在1万8000種の薬があるのだが、その中には“元が取れない”という理由で日本からなくなったら患者によっては命が保てない薬もある。なくなっては困る薬を「安定確保医薬品」として国が金額をある程度保たせようとしているが、各学会から挙げられたそうした薬の数は800だという。しかしそれでも資金面からいうと工面が難しく、厚労省では数をもっと絞り、その中でランク付けをする予定なのだという。
国際医療福祉大学 松本哲哉 主任教授
「残念ながら1万8000の薬のうち採算が取れない1割はもうすでに日本では作らないことになっている。そしてさらに『作りたくない』と製薬会社が考えている薬も1割ある。新薬が入って来ないというだけでなく、今ある薬すら日本はなくなってきている。薬価だけではなく新療報酬も下がるなど医療費全体に日本は資金がつぎ込まれていないので医療全体が今後しぼんでいく可能性も高いのが現実…」
国民皆保険で3割負担の医療が受けられていることが当たり前のようになっている日本。図らずもトランプ大統領が日本の医療全体が抱える大きな問題も明らかにしたことになる。
(BS-TBS『報道1930』5月20日放送より)