【事故防止への提案(提言)】 原文から引用
まず落雷が発生しうる状態の場所であるかどうかを知る必要がある。現状では、落雷の発生については、その時刻や場所についてピンポイントで正確に予測することは難しいが、雷雲の動きや雷の発生状況から、ある地域における雷の発生の確率が予想されている。
そこで、その雷発生予想を活用して落雷が発生しうる状態であるかどうかを認識しうる。落雷が発生しうる場所であると認識したら、上記のように人体をその場所から撤退させることになる。
具体的には
(1) 屋外活動実施責任者及び実施担当者が、雷及び落雷についての最新の正確な知識を習得しておくこと。
落雷は、落雷の地点において事前に降雨や雷鳴が聞こえるなどの予兆がないときでも発生すること、雨が降り出した後に雷が発生するという順序に限らず、雷の後に雨が降り出すこともあるなど、降雨がないからといってあるいは雷鳴が聞こえないからといって落雷はないとはいえないことを理解しておくこと。
特に夏場の背が高い積乱雲(いわゆる入道雲)による落雷と異なり、春などの時期は、予兆がなくいきなり落雷があったと思われるような落雷が発生することがあるので注意を要する。
遠くの雷鳴が聞こえた場合、その雷鳴の元となった雷は自分がいる地点から15キロメートルより近い場所で発生していること、及び落雷は、通常、雷雲の周囲の半径約15キロメートルの範囲で地面に落ちるものであるから、遠くで雷鳴がしたと聞こえても、その雷鳴の元となった雷は、自分がいる地点に落ちる可能性があったことを認識しておくこと。
落雷は、身に着けている物(例えばゴルフクラブ等)如何で人体に落ちるものではなく、従来落雷を誘引すると思われていた物を何も身につけていなくても、雷が落ちることがあることを理解すること。
雷、雷雲、落雷に関する最新の正確な知識は、屋外活動実施責任者及び実施担当者だけではなく、生徒等に対しても、同様の知識を習得させることが望ましい。
(2) 屋外活動実施責任者及び実施担当者は、屋外活動の前の時点で、天気予報の雷注意報の発表の有無を確認すること。
雷注意報が発表されているときは、雷について、気象台は「警報」という発表の仕方はしていないことを想起して、現状は「雷警報」に相当する気象の状況であるかもしれないと想定して、雷についての情報の取得及び屋外活動実施可否の判断等にあたること。
屋外活動実施責任者及び実施担当者は、屋外活動の前の時点から同活動終了の時点に至るまで、インターネットやスマートフォン等のIT機器を活用して、当日の雷雲、雷、落雷についての正確な情報を取得すること。
落雷についての情報の取得については、気象庁の「雷ナウキャスト」が1kmの格子状の地域毎に60分先までの10分刻みの発雷予測を表示していて、その予測は10分毎に更新されるので、その見方に習熟し、一定時間ごとに「雷ナウキャスト」を見て、屋外活動が行われる場所の発雷予測を確認するという方法が現状ではよい方法だと思われる。
雷の発生を探知する機器を用意し、その機器が表示する情報を活用することも有用である。
上記「雷ナウキャスト」の見方は、生徒等に対しても、習得させることが望ましい。上記の手段・方法で、雷に関する最新の情報を取得すること。
(3) 取得した雷雲等の情報により落雷の危険があるときは、屋外活動実施責任者(責任者が判断できないときは実施担当者)は、躊躇することなく屋外行事を停止し、安全な建物の中に生徒等を避難させること。
取得した情報で雷の発生が見込まれる場合に、屋外活動の運営をどうするかについてのマニュアルを整備しておくことにより、避難・屋外活動の停止等の判断に遅れが生じないようにしておくこと。
上記のマニュアルは、屋外活動の主催者や参加者及びその保護者など関係者全員が理解しておくようにすること。
また、上記のマニュアルは、学校保健安全法第27条にいうところの「危機等発生時対処要領」(いわゆる「危機管理マニュアル」)の一部として編纂されることも検討されてよい。
(4) 屋外活動実施責任者(責任者が判断できないときは実施担当者)は、避難の終了及び屋外活動の再開については、「雷ナウキャスト」等により雷雲等の動き等に関する情報を十分に収集して落雷の危険が去ったと認められる状態になったことを確認した上で判断すること。
「雷ナウキャスト」及びその他の天気予報アプリ等で雷雲がなく、屋外活動の場所の周辺で30分以上発雷がなく、かつ、別の雷雲の発生や接近がないと確認できた上で、避難の解除及び屋外活動の再開をすること。
(5) 避難方法及び避難中の事故を避ける対策をあらかじめ用意しておくこと。さらに避難したときに備えて、屋内でできる活動をあらかじめ用意しておくこと。
屋外活動の中止や延期を躊躇することなく判断できるように、避難方法の準備及び中止等をした場合の代替の活動を用意しておくこと。並びに、屋外活動を中止等することとなった後で急遽何らかの行事を設定すると、事前の十分な検討がされていないので、代替の活動の中で何らかの事故が起こり得るので、そういう事故を回避する必要があること。
を実行することが望ましい。
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※報告書(公表版)熊本県立鹿本高等学校サッカー部落雷事故調査委員会 53ページ~55ページより引用














