◇《“複合差別”の研究は、警察で受けた対応がきっかけに…》
被害に遭った安達さんは、警察に相談した際、思いもよらぬ扱いを受けることになりました。接近してきた相手の特徴などを尋ねられた際、上手く説明ができず、警察に被害の相談を取り合ってもらえなかったのです。
自分に視覚障害があることで、受けた思わぬ対応でした。この経験が、安達さんの心に大きな違和感を抱かせ、『複合差別』という研究に向かわせるきっかけになりました。
安達朗子さん
「最初は、男性も女性も関係なく、視覚障害のかたを対象にしていましたが、女性の視覚障害者は、男性が経験することのない苦悩だとか、すごく深刻だと感じましたので、女性視覚障害者とに焦点を当て、研究を始めました」

安達さんが取り組んだ『複合差別』―。それは障害に加え、性別や民族など、複数の差別がかけ合わさり、より複雑で深刻な差別が起きていくことを意味します。
大学院で研究を進めることになり、膨大な論文に目を通し、いくつもの文章を作成する日々が始まりました。

◇《“ひき逃げ”に遭い瀕死の重傷…15歳で視覚障害に》
安達朗子さん
「論文を読んだり、文章を作成するために打ち込んだりするときに、全部読み上げてくれる」
ほかに、キーボードにも工夫があります。
安達朗子さん
「手を置くポジションの所に凹凸のあるボタンを付けることで、キーボードが何もないツルツルのところだと、探すのに時間がかかってしまうので」

パソコン画面に映し出された文章や、入力した文字を読み上げる専用ソフトを使い、安達さんは、コツコツと研究の成果をまとめ、論文を仕上げていきました。
安達さんが、交通事故に遭ったのは高校1年生のときです。ひき逃げされ、脳挫傷のほか、肋骨や鎖骨などを折る大けがを負い、ICUへ…。そして、もうろうとした意識の中で、大きな異変に気づいたのです。
安達朗子さん
「意識もはっきりしていなかったんですけれども、そういった状況の中で突然(視界が)真っ暗になりまして」