札幌に、これまでになかった視点から、ある研究に取り組んだ女性がいます。研究のテーマは『複合差別』です。

障害に加え、性別など複数の差別が、かけ合わさり、より複雑で、特有の差別が生じるというのが『複合差別』です。この研究に取り組んだ女性の思いを取材しました。

◇《視覚障害の女性が帰宅途中に受けた“つきまとい被害”》

 安達朗子(40)さんは、この春、札幌にある北星学園大学の大学院を修了し、社会福祉学の博士号を取得。独自の視点から、約6年をかけて『複合差別』というテーマで、論文をまとめ上げました。

安達さんは、15歳のときに遭った交通事故が原因で、視覚に障害があります。右目は明暗が分かる程度で、左目の視力は0.01ほどです。

そんな安達さんの身に降りかかった、ある出来事が『複合差別』の研究に取り組む理由の一つとなりました。

安達朗子さん(40)
「自宅に帰るときに、一人で歩いていたんですけれど、後ろから男の人に付けられてしまった」

白杖を使い、大学から一人で帰宅する途中のことでした。背後から近づいてきた何者かに、付きまとわれる被害に遭ったのです。

安達朗子さん
「すごく近づいて、後ろにずっといる状況で、もう鼻息が聞こえるくらいで」

 どんな相手が自分の背後に張りつき、付きまとっているのか。視覚に障害がある安達さんにとって、まったく状況がつかめず、強く身の危険を感じる出来事でした。ところがです。