日本国内の言動が国際関係に与える影響
習近平政権にとって、日本との歴史問題は外交における重要なカードの一つです。安全保障が注目され、日米関係が複雑化する中で、国内の不満のはけ口としても利用できる側面があります。
そのような状況下で、日本の国会議員が過去の戦争に関する歴史認識を疑わせるような発言をすることは、「やはり日本は反省していない」「都合の悪い事実を改ざんしようとしている」という中国側の批判の口実を与えかねません。歴史に敏感であるべき戦後80年の節目=2025年において、日本の政治家の言動は、国内に留まらず国際関係にも大きな影響を与える可能性があることを認識すべきでしょう。
西田議員が発言を撤回した5月9日は、日本が中国に「対華21か条の要求」を突き付けてからちょうど110年となる日でした。中国にとってこの日は「国恥の日」として記憶されており、9月に向けて、歴史問題を巡る緊張が高まることが予想されます。
中露が蜜月関係を演出する中で飛び出した日本の政治家の発言は、中国がロシアと連携して歴史問題で仕掛ける上で、格好の材料となる可能性があります。今回の出来事は、日本の歴史認識に対する国際的な視線が、これまで以上に厳しくなっていることを示唆していると言えるでしょう。
◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める