爆発すれば深刻な放射能汚染を起こすとされる「汚い爆弾」。それを一方的に「ウクライナが使う」との主張を繰り返すロシアに国際社会から批判が高まっています。侵攻から8か月、ロシアの狙いとは…
■「汚い爆弾」とは?

ロシア側が「ウクライナが使う可能性がある」と一方的に主張し始めた「汚い爆弾」。一体どのような爆弾なのでしょうか。
物理学者の多田将さんは、「材料となる放射性物質があれば比較的簡単に製造できる」と警鐘を鳴らしています。例えば原子力発電所から出る放射性廃棄物などを材料にして、ダイナマイトなどの爆発物と組み合わせて爆発させます。爆風に乗って放射性物質が撒き散らされ、深刻な放射能汚染を起こすとされています。
■「汚い爆弾」の歴史

「汚い爆弾」の歴史は1941年にさかのぼります。広島や長崎に原爆が投下されるよりも前に、アメリカ科学アカデミーが、敵地に放射性物質をばらまく爆弾の開発を試みたといいます。その後、「汚い爆弾」が取りざたされたのは、1995年。アメリカの公共放送「PBS」は、チェチェンの武装勢力がモスクワの公園に「汚い爆弾」を仕掛けたと報じています。幸い爆発には至りませんでしたが、回収された爆弾の中には、医療機関などでも手に入れることができる放射性物質のセシウムが入っていたといいます。
また、2002年、アメリカ国内で「汚い爆弾」によるテロを計画していたとして、国際テロ組織・アルカイダのメンバーが逮捕されました。「爆弾」を製造するため、爆発装置の研究や放射性物質の調査をしていたとされています。これまで「汚い爆弾」が戦闘やテロで使われたケースは確認されていませんが、放射性物質の悪用に対して懸念が高まる中、2013年にはIAEA=国際原子力機関は、「核爆弾」「核施設への攻撃」と並び、核テロの最大の脅威に挙げたのです。
