■「がんワクチン」はどの種類のがんに有効なのか

「がんワクチン」は、どんな種類のがんに対して使用が想定されているのでしょうか。

東京医科歯科大学 位髙啓史教授:
「一番有望視されているのは皮膚がん。肺がんの一部、頭頚部がん。いくつかのタイプのがんにはもう効果が確認されていて、いま人への治療の準備が急ピッチで進んでいる状況」

東京医科歯科大学 位髙啓史教授:
「コロナパンデミックが起こらなければ、実はもう今年あたりにも第1号のがんワクチンが実用化されるというぐらいのスケジュールだったと思います。希望的な観測としてはあと1年から2年というところかなと個人的には思っています」

■メッセンジャーRNAの技術はがん以外にも

新型コロナワクチンで使われたメッセンジャーRNAの技術が切り開く医療の未来。ターゲットはがんだけではありません。位髙教授が進めている実験の映像では、メッセンジャーRNAを使った脊髄損傷治療を受けたネズミが、麻痺から回復している様子が分かります。

東京医科歯科大学 位髙啓史教授:
「脊髄損傷を起こしてしまったネズミだが足を引きずりながら歩いている。それに対してメッセンジャーRNAで治療したマウスは、一歩一歩足をしっかり動かすようになっていて、麻痺が回復してきていることが分かります」

ーー将来的には脊髄損傷した人でも、例えば半身不随になった人を治せる可能性がある?

東京医科歯科大学 位髙啓史教授:
「可能性がある。それをもちろん目指してやっている」

このほかにも、日本人の病気による死因3位の「脳梗塞」については、脳の神経細胞が死ぬのをメッセンジャーRNA治療でいかに抑えることができるか。また加齢によって軟骨がすり減り膝が痛む「変形性関節症」の治療についても研究が進んでいます。

東京医科歯科大学 位髙啓史教授:
「ほとんどのお年寄りの方はなってしまう病気。(治療方法は)痛みを取るための薬を入れたり、もうあとは運動しなさいリハビリしなさい、もう人工関節を入れましょう、そういう治療しかなかった。メッセンジャーRNAを投与すると軟骨の壊れ方が非常に抑えられる」

ーー何年ぐらいで治験に入ろうとお考えですか?

東京医科歯科大学 位髙啓史教授:
「2024年に患者さんの臨床試験を始めさせていただくということで準備を進めています。メッセンジャーRNAはどんなタンパク質でも作ることができるので、全く新しいタイプの薬として今後使われるようになる。本当に今までできなかったことがメッセンジャーRNAを使うことによってできるようになる。 (医療)革新の1つと言っていいと思う」

■「メッセンジャーRNAが多くの病気に使われるようになる」

新型コロナワクチンに使われたメッセンジャーRNAを応用すれば、様々な病気を予防したり、治療したりできるようになる・・・。

現在「がん治療ワクチン」の開発を進めているビオンテック社のカタリン・カリコ上級副社長も、変わる医療の未来をこう話しています。

独・ビオンテック カタリン・カリコ上級副社長:
「ある種の肝臓疾患や心臓疾患の治療にもなりますし、メッセンジャーRNAがとても多くの異なる用途や他の病気に使われるようになるでしょう」

(まるっと!サタデー 2022年10月29日放送より)