ロシアはウクライナが放射性物質をまき散らす“汚い爆弾”を使うと発信し、西側はそれを“偽旗作戦”と疑う・・・。刻々と変化するウクライナでの戦況。前線で今何が起きているのか。まもなく迎えるウクライナの冬とは…。そして、ロシアが持つという2つの軍事戦略とは…。

■「避難する民間人は撤退する軍が攻撃されないための“生きた盾”だ。」

4州併合からすさまじい勢いで地域の奪還を進めるウクライナ軍。南部へルソン州ではロシア軍の撤退が続いているという。番組では州都ヘルソンに暮らし続けるウクライナ人に話を聞いた。彼はテレビ局の代表だが、ロシアに占領されてからは放送ができずネットで情報発信をしている。

地元テレビ『ヘルソン・プラス』 ヴォロジーミル・コシュク代表
「1週間前に取材されていたら顔を隠し、音声も変えてもらった。あるいは後ろ姿で出演していただろうね。この3.4日でヘルソンの状況は激変したよ」



ロシアの公務員がヘルソンを脱出し、監視する者がいなくなったおかげで、顔を出して取材を受けられるようになった。しかし、ロシア兵の数は激増したという。

地元テレビ『ヘルソン・プラス』 ヴォロジーミル・コシュク代表
「最近ヘルソンでは動員された兵士が増えた。見た目からして明らかにちゃんとした軍人じゃない。新品の軍服を着て眼鏡をしている人も多い。兵士というより学生に見える。ヘルソン市周辺で塹壕を掘っている。防衛線を強化しているんだろう。ヘルソンの戦いに向けて準備しているようだ。(中略~一方住民は避難している)避難する船に乗った住民は身分証を没収される。身分証がないから自由に行動できなくなる。その後バスでクリミア方面に連れていかれた。しかしウラル地区に行った人もいるようだ。これは避難ではなく追放だ。いずれはシベリアに送られるという噂もある。」

ウラル地区といえばヘルソンから3000キロ以上離れた山岳地帯だ。そして、彼らを乗せたバスは、ただの移動手段ではなく“人間の盾”として利用されているという。

地元テレビ『ヘルソン・プラス』 ヴォロジーミル・コシュク代表
「移動中バスとバスの間には軍用車両が走る。兵士を運ぶ車輛だ。車列は住民を乗せたバス・兵士を乗せた軍用車・バス・軍用車…というように交互に並ぶ。つまり避難する民間人は撤退する軍が攻撃されないための“生きた盾”だ。

ヘルソン州各地でロシア軍が撤退しているのは事実なようだ。一方で州都ヘルソン市だけは動員した若者をつぎ込んで守ろうとしている。

北海道大学 服部倫卓 教授
「今回のウクライナ侵攻の中でロシアが州都を占拠したのはヘルソン市が唯一なんですね。4州併合したのに州都を失うというのはメンツ丸つぶれであると。だから他からは撤退しても、ヘルソン市だけは守るつもりかと・・・」

メンツのために州都だけは守る。ロシアもかなり厳しい戦い方を強いられている。一方ウクライナにとっては、ロシア軍を追い払っても過酷な現実が迫っている。冬の寒さだ。