富山県が新たな成長領域と捉えるバイオ医薬品。このバイオ医薬品の製造などを担う人材を育てようと県内で初めて、製薬企業の新入社員などを対象とした育成講座が開かれました。その狙いとは。

7日開かれた、バイオ医薬品の製造や品質管理を担う人材育成講座。県内の製薬企業の新卒から入社3年目程度の若手社員を対象とし、6社40人が参加しました。

バイオ医薬品は、遺伝子組み換え技術や細胞の培養技術を使って製造される医薬品です。タンパク質を有効成分とし、関節リウマチや、がんへの治療効果が期待されています。

富山県立大学 中島範行副学長
「富山だけではなくて、日本全国として、世界から見るとどっちかというと遅れている」

バイオ医薬品の開発をめぐっては、日本は、世界に比べ遅れをとっているのが現状で、大規模な製造体制の整備とともに、専門人材の不足が課題になっています。

そこで県では、地場産業の製薬の強みを生かし、2018年にはバイオ医薬品の研究開発を担う施設を整備するなど、人材育成に力を入れています。

「新卒教育プログラム」と題したこの講座は、県立大学が主催したもので、バイオ医薬品の製造工程や品質管理などの基礎を21日間かけて学びます。

ライバル企業の若手社員が切磋琢磨して、バイオ医薬品に関する見識を広げる初の取り組みです。

新卒の受講生
「大学院まで電気化学をやっていたので全然専門外なんですけど。基本的なことから学べるということで、ありがたいです」

新卒の受講生
「他の会社、大学の方と交流することで、より幅広い知識を身に着けられるのではないかなと期待しています。富山の薬事業の中でも、けん引していけるような存在になりたい」

プログラムの責任者は、今回の講座を富山モデルとして確立し、全国展開を目指したいとしています。

富山県立大学 中島範行副学長
「今までやってきた薬の知識の上に、ある程度バイオ医薬品特有の技術なりノウハウがあるので、それを作っていかなくてはならない。既に伝統的な『富山と薬』という関係がありますけど、1枚皮が剥けて、より大きな仕組みができればいいなと」

経済産業省によりますと、バイオ医薬品の1つである抗体医薬品について、国内生産は徐々に増えてきてはいるももの、約9割が海外生産に頼っているのが現状です。

国内での製造拠点の整備が急がれるなか、富士フイルム富山化学は、バイオ医薬品の開発・製造を受託する新たな拠点を富山市に設けます。通常はバイオ医薬品の製造をおこないますが、パンデミック時にはワクチン製造への切り替えが可能。アジア圏でのビジネス拡大を目指しているということです。

また、県は「くすりのシリコンバレーTOYAMA」と題したプロジェクトを進めていて、2027年までに1兆円産業の実現を目指していますが、2023年時点での医薬品生産額は6221億1100万円。現場からは「厳しい」といった声も上がっていて、実現は不透明です。