今月3日、沖縄県内で行われたシンポジウムで、自民党の西田昌司参院議員がひめゆりの塔を訪れた際に目にした沖縄戦に関する説明について、「歴史の書き換え」などと主張しました。
西田議員の発言に、県内で疑問の声が相次いでいます。
▼自民党・西田昌司参院議員
「我々自らがこの歴史を取り戻さなきゃならないじゃないですか」
今月3日、那覇市で開かれた「憲法シンポジウム」に登壇した自民党の西田参院議員。

自民党が目指す憲法改正は重要だとしたうえで、「正しい歴史が学校で教えられていない」などと持論を展開しました。
▼自民党・西田昌司参院議員
「組織的に違うことを教えられてるんですよ。教育という力を使って。そして報道という力を使ってやられてるんですよ。何でかと、占領中にそういう間違った歴史観、連合国アメリカが正しいという歴史観で、歴史が塗り替えられた」

”書き換えられた歴史”の一例としてあげたのが、数十年前、ひめゆりの塔を訪れたときのこと。
▼自民党・西田昌司参院議員
「今はどうか知りませんけど、ひどいですね。ひめゆりの塔で、亡くなった女学生の方々がたくさんおられるが、あの説明のしぶりを見ていると、要するに日本軍がどんどん入ってきて、ひめゆり隊が死ぬことになっちゃったと。そして、アメリカが入ってきて、沖縄が解放されたと」
こうした記述を目にしたとして、「亡くなった方々は救われない」と述べました。

今回の西田議員の発言について、ひめゆり平和祈念資料館の普天間朝佳館長は―
▼ひめゆり平和祈念資料館・普天間朝佳館長
「まずそのような趣旨の記述は過去にも、現在にもありませんでしたので、非常に何を言っているんだろうと思いました」
西田議員の主張は、根拠のない発言だとしたうえで、学徒たちが生き残った苦しみを抱えながら、血のにじむ思いで残した証言を踏みにじるものだと、語気を強めました。

▼ひめゆり平和祈念資料館・普天間朝佳館長
「彼女たちがその思いで、戦後世代の人たちに絶対戦争を起こしてはならないという思いで。そういうことも否定するような、冒涜するような発言だと思うととても胸が詰まる」
シンポジウムでは、沖縄の平和教育を批判しました。
▼自民党・西田昌司参院議員
「沖縄の場合には、地上戦の解釈も含めて、かなりめちゃくちゃな教育のされ方をしてますよね。そのことも含めて、もう一度われわれが自身の頭で考え、ものを見て、流されている情報が何が正しいのかということを自分たちで取捨選択して、自分たちが納得できる歴史を作らないとできないと思います」

沖縄戦に関する調査・研究を行う琉球大学の北上田源准教授は、「歴史との向き合い方が乱暴だ」と指摘。「国会議員としての発言の責任が問われる」と述べ、「改憲を訴えるなか、恣意的に歴史を利用している」と強調しました。
また、シンポジウムを共催した自民党県連は、「過去の大戦をめぐって沖縄県民は苦難の歴史を歩んできた事実があり、県民の反発を招くような表現は避けるべきではなかったか」とコメントを発表しています。「講師の発言についてはあくまで個人の見解を述べたもの」と説明しています。

▼県議会与党会派・てぃーだ平和ネット 山内末子県議
「とんでもない発言だと思う。死者に対しての冒涜であり、沖縄県民に対して愚弄する発言だと思っております」
県議会与党会派の代表は、西田議員の発言の撤回と謝罪を求める抗議決議を本会議で議題とすることを目指し、7日の議会運営委員会に提起することを確認しました。

戦後80年、沖縄戦の実相と真摯に向き合い、後世に伝えていく必要があるなか、根拠なく発せられた国会議員の言葉に、県内では波紋が広がっています。
戦争体験者の声を直接聞くことが難しくなった今だからこそ、残された証言との
向き合い方が問われています。